マイナンバー特集

はじめに

 賛否両論ある中で、見切り発車する壮大な国家プロジェクト「マイナンバー制度」。未だに不明な点も多く、制度が今後も大きく変化するであろうことが窺えます。拙速に過ぎる感は否めませんが、どうあがいても来年1月には施行されてしまいます。大騒ぎした住基ネットが、施行後はほとんど無関係・無関心になったように、「マイナンバー制度」もうやむやの内に消えてゆくのではないかと考える方もいるでしょう。しかし住基ネットの利用範囲が限定的だったのに対し、マイナンバー制度は、税務、社会保障、災害対策、さらに預金口座との連動やパスポート、戸籍、医療分野、証券分野にまで範囲が拡大されようとしています。利用範囲が住基ネットの比ではないので、一度導入されると簡単には後戻りできません。そうであれば希望的観測にすがるよりも、罰則などの対象とならないように万全の準備でマイナンバー制度を迎えることが重要です。

 そこで、少しでも多くの方のお役に立てばと考え、当社発行「インフォメーション」で毎月連載している「社長になろうと思ったとき」マイナンバー編を、一挙まとめてご紹介することにしました。制度の内容や問題点の理解に利用していただければ幸いです。

 なお、マイナンバー編は現在も連載中ですので、新しいインフォメーションがアップされ次第、こちらへも追加してゆく予定です。

 原稿は作成時点の情報ですので、現在の法律や制度に合致していることを保証するものではありません。また文章中には私見が含まれていることをご承知下さい。
                                                      以上     

もくじ

 その1 「マイナンバー」ってどんなもの?               
 その2 マイナンバーは身近な問題です!                
 その3 先駆者アメリカの状況は!えっ支払調書にマイナンバーが必要?  
 その4 法人にもマイナンバー!そして国の管理が始まる!        
 その5 国の思惑・マイナンバーの限界                 
 その6 住基カード失敗の教訓は生きるか?               
 その7 個人専用ページ「マイナポータル」!マイナンバー収集は難しい! 
 その8 究極の個人情報「マイナンバー」!セキュリティは大丈夫?    
 その9 必見!上野会計はマイナンバーをサポートします PART1   
その10 必見!上野会計はマイナンバーをサポートします PART2   
その11 マイナンバーを取得できない人達                
その12 漏洩の危険性と緊急改正                    
その13 不祥事の実態とマイナンバー対策費の処理            
その14 個人番号カードは申請するべきか否か              
その15 何がどうなるマイナンバー                   
その16 資産家とマイナンバー                     
最 終 回 マイナンバー制度俯瞰 メリット・デメリット          



その1 「マイナンバー」ってどんなもの?

 全ての国民と法人に統一番号を割り振って、国が情報を一元管理するマイナンバー制度。幾多の紆余曲折がありましたが、いよいよ今年10月、全国民にマイナンバーが交付され、来年から運用されることが予定されています。そこで今回からシリーズで、マイナンバー制度の導入に伴う影響を考えてみます。


 私 「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします!!」

先輩「こちらこそ宜しく。あれ、ずいぶん気合いが入っているけど何かあった?」

 私 「わかりますか。だって今年はいよいよマイナンバー制度が始動するので、
   私たちソフト業界にとっては、システム開発をはじめとする『特需』が
   期待できる勝負の年ですからね。人事システムや給与システムの変更も
   必要だし、個人情報の管理だって徹底しなければなりません。システム
   の抜本的な見直しや新規導入も見込まれます。ちょっと考えただけで笑
   いがこみあげてきそうですよ。」                 

先輩「なるほど、君たちの業界にとってマイナンバー制度は千載一遇のビッグ
   チャンスというわけだね。そういえば先日読んだ株式投資の本にも『今、
   注目株はマイナンバー関連のIT銘柄』と書いてあったな。」    

 私 「そうでしょう!国の中枢システムには何千億円もの予算が盛られている
   し、マイナンバーを利用する地方自治体をはじめ金融機関や一般の民間
   企業でもシステム対応、セキュリティ強化などの需要がありますからね。
   その影響は膨大ですよ。」                    

先輩「特にセキュリティ対策は重要になるだろうね。改正される源泉徴収票を
   みても、大きさが従来の倍になって、従業員本人はもちろん、その扶養
   家族のマイナンバーの記載欄も設けられているからね。つまり会社は従
   業員だけでなく、その家族のマイナンバーまで管理する必要があるわけ
   だよ。」                            


 私 「でも、どうして扶養家族のマイナンバーを記載するのですか?」   

先輩「例えば兄弟が、高齢のお母さんをそれぞれの扶養家族として誤って控除
   していた場合でも、税務署はナンバーで簡単に突合ができるわけさ。」

 私 「なるほど。たしかマイナンバー制度のメリットに、『脱税防止』があり
   ましたよね。あと『行政手続きの簡素化』というのもあった気がします。」

先輩「そうだね。今は各行政機関で別々に管理している情報が一元的に繋がる
   から、行政への届け出が簡素化されるはずだよ。例えば、君は結婚した
   時に引っ越しをしただろう。手続きが大変じゃなかったかい?」   

 私 「ものすごく大変でした!転居届を出したり、運転免許の住所変更をした
   り、年金事務所に行ったりと色々な所を回りましたね。役所が開いてい
   る平日に合わせて時間をやり繰りして出かけたのに、どこも混んでいて
   窓口で1時間近く待たされました。やっと窓口に辿り着いても、やれ印
   鑑が無いとか、添付書類が足りないとか言われてうんざりしましたよ。」

先輩「まあ普通に考えれば、それぞれのお役所が君に別々の番号をつけて管理
   しているわけだから、それぞれ別々の手続きが必要になるのは当然だよ。
   日本のように年金番号、納税者番号、運転免許番号からパスポートに至
   るまで全て違う番号というのは先進国では少数派だけどね。この縦割り
   行政の象徴ともいうべきこれらの番号がマイナンバーに統一されること
   で、複数機関への届出や添付書類が大幅に簡素化される予定だよ。」 

 私 「それはありがたい。だったら歓迎すべき制度じゃあないですか?」  

先輩「ただしデメリットも多いよ。例えば莫大な導入コストや運用コスト、自
   分が番号で管理されることに対する違和感もあるだろう。何より情報漏
   洩のリスクが最も恐いと思うよ。つまり『個人情報が流出する危険はな
   いか?』というマイナンバーの管理方法が重要になるだろうね。」  

 私 「管理方法?そこは既に『個人情報保護法』という法律がありますよね。」

先輩「たしかにマイナンバーも個人情報だから原則は個人情報保護法が適用さ
   れるけど、マイナンバーはより厳格に管理されるべき『特定個人情報』
   とされていて、極論すれば社員のマイナンバーを扱うほとんどの企業が
   処罰の対象になるからね。おっと、紙面の都合で今回はここまでだよ!」

 来月も引き続きマイナンバー法について考えてみましょう。なお、本稿は平成26年12月24日現在の内容です。

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その2 マイナンバーは身近な問題です!

 社会保障と税の共通番号。当初は『国民背番号』とか『個人識別番号』などと呼ばれていましたが、最終的な名称は『マイナンバー』に決定しました。制度の是非はさておき、このネーミングにはセンスを疑う声も聞かれます。何やら昔あったフレッツ光の追加番号サービスと同名?しかも「私のマイナンバーは…」といえば、「私の私のナンバーは」となってしまうので話す時に躊躇しそうです。ということで、今月もマイナンバー制度の勉強です。なお、本稿は平成27年1月10日現在の内容です。


 私  「先輩!前回最後に『マイナンバーは個人情報よりも厳格に管理される特
   定個人情報だから、ほとんどの企業が処罰の対象』とつぶやいて話が終
   わりましたよね。ずっと気になっていましたが、どういう意味ですか?」

先輩 「ああ、あれ?そうだな、簡単に言うと個人情報保護法とは別に、マイナ
   ンバー制度を導入するために、『マイナンバー法』という法律ができた
   わけだね。その中でマイナンバーに関連する情報は、個人情報保護法で
   定める個人情報よりも、もっと厳重に保護する特定個人情報とされて、
   漏えいには個人情報保護法より重い罰則が科せられることになったんだ。」

 私  「マイナンバー法...重い罰則ですか。」             

先輩 「そう、たしかにマイナンバーを導入すれば便利になるけど、その反面で
   漏えいや悪用のリスクが大きいから、厳しい措置を定めたということだ
   ね。」                             

 私  「具体的には、何がどう厳しくなるのですか?」           

先輩 「例えば個人情報保護法だと、5,000件以上の個人情報をデータとして保管
   している事業者だけが規制の対象だけど、マイナンバー法では件数の要
   件はないんだよ。つまり、社員のマイナンバーを1件でも扱う事業者は
   罰則の対象になるから、何らかの対策が求められることになるわけだね。」

 私  「えっ!前回、『給与支払報告書』にも、社員や家族のナンバーを記載す
   るって勉強しましたよ。だったらほとんどの事業者が対象じゃないです
   か。」                             

先輩 「そういうこと。それが前回最後のつぶやきの真相だよ。」      

 私 「え〜!それで、罰則はどうなっているのですか?」         

先輩 「もし、民間企業でマイナンバー情報の漏えいがあったら、漏洩者は最高
   で『4年以下の懲役、もしくは200万円以下の罰金、又は併科』だね。」

 私  「懲役4年、罰金200万円って、かなり厳しい処分ですよ。それだけマ
   イナンバー導入に国も力を入れているということでしょうけど。そうな
   るとセキュリティ対策が大変ですよね。でも、10月にナンバーが交付
   されて来年から運用が始まるのに、ほとんどの事業者は何の準備もして
   いないと思いますよ。罰則だって知らないはずです。」       

先輩 「でも、遅くとも制度がスタートするまでにマイナンバーの管理体制をし
   っかりしておかないと、全ての社員が罰則の『当事者』になる可能性が
   あるからね。特に近年はコンプライアンスに厳しいから、会社の信用は
   一気に失墜して、当然に経営責任も問われることになると思うよ。」 

 私 「つまりマイナンバー法は、ほとんどの事業者がセキュリティ対策に取り
   組まなくてはならない大問題の法律ということですね。」      

先輩 「そのとおり。現にマイナンバー先進国の韓国やアメリカなどでは、ナン
   バーの悪用による『なりすまし犯罪』が大きな社会問題になっているか
   らね。行政が利用していたナンバーを、民間へ拡大したことに伴って流
   失が急増して、預金が引き出されたり、他人名義のクレジットカードが
   作られたりといった『なりすまし犯罪』が増加したから、日本政府も民
   間企業のナンバー管理には相当慎重だと思うよ。アメリカなどでは、逆
   にナンバーの利用範囲を縮小する方向にあるようだね。」      

 私 「じゃあ、日本はナンバー先進国の潮流に逆行しているのですか?」  

先輩 「まあ、日本は今からナンバーを導入するわけだから、逆行という見方も
   変だと思うけど、情報漏えいというリスクと統一番号で管理するメリッ
   トを比較して、メリットの方が大きいという国の判断だろうね。」  

 私 「国側の事務負担が軽くなるだけで、国民は自分たちの情報が漏えいする
   リスクが増えるだけという気もしますけど.....」       

先輩 「そうとばかりも言えないよ。東日本大震災の時も情報が一元管理されて
   いなかったから、被災した人を特定できずに支援が遅れたり、津波で住
   民データが流されて行政事務が滞ったり、消えた年金問題の時だって、
   年金記録の照合にも対応できなかっただろう。マイナンバーを活用すれ
   ばこういった問題を解決できるよね。」              

 私 「なるほど。いわれてみると確かにマイナスばかりではなさそうです。」

 現状では、なかなかイメージが湧きにくいマイナンバー制度。そこで来月は、マイナンバー制度導入後の具体的なイメージを見ていきましょう。

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その3 先駆者アメリカの状況は!えっ支払調書にマイナンバーが必要?

 前回「マイナンバー」のネーミングセンスについて疑問を呈しましたが、皆さんはマイナンバー広報キャラクターのウサギをご存じですか?700通を超える応募から決まった愛称は「マイナちゃん」。何とも安直に思えるのは気のせいでしょうか。どうせなら「マイナッシー」くらいのインパクトある愛称にすれば...?しかも、なぜキャラクターが必要なのか理解できません。さて今月もマイナンバー制度について考えてみます。なお、本稿は平成27年1月20日現在の内容です。


 私 「先輩!先月までの勉強で、マイナンバー法のことや、情報漏えいリスクに
   ついては理解できました。でもマイナンバーが導入されると、どんな社会
   になるのか具体的なイメージが湧きません。」            

先輩「そうか、じゃあマイナンバー導入の先駆者であるアメリカの状況を見れば、
   少しはイメージできるかもしれないね。実はアメリカでは1936年から、
   国民1人1人に9ケタの『社会保障番号』というナンバーを割り振ってい
   て、これが日本でいうマイナンバーと同じ役割のものなんだ。」    

 私 「1936年?今から約80年も前に導入したということですか。」   

先輩「そうだね。この社会保障番号は、今や行政分野だけでなく、電気やガス、
   水道などの契約から、銀行口座の開設、住宅購入に至るまで、あらゆる分
   野で広く利用されているんだ。入学時や就職時はもちろん、この番号を提
   示しないとクレジットカードの発行もできないよ。」         

 私 「でもそれだと、どこの学校を出て、どこへ就職して、どこで何を買って、
   銀行にいくらお金があるか、全て管理されてしまいますよね。しかも、そ
   んなに広く利用されると番号が漏えいする危険がありませんか?」   

先輩「その通り。現実には番号が盗まれて勝手にローンを組まれたり、他人名義
   のクレジットカードが作られたり、年金の受取口座を無断で開設されると
   いった『なりすまし』トラブルが続出しているわけだね。」      

 私 「だったら日本でも同じ事が起こる可能性がないですか?」       

先輩「だから日本では、当面、マイナンバーの利用範囲を『社会保障』と『税』、
   『災害対策』の3分野に限定しているんだよ。具体的には確定申告や年金、
   雇用保険関係、生活保護の給付等に限定して利用が開始されるわけだね。」

 私 「なんだ、全て行政関係じゃないですか。それなら差しあたり安心です。」 

先輩「ところが、そう簡単ではないんだ。例えば、『税』の部分だけ考えても、
   個人の所得が発生する全ての場面でナンバーが必要になるから、行政だけ
   でなく民間企業でもナンバーを利用する必要が出てくるわけだよ。」  

 私 「えっ、どうして民間企業がナンバーに関係するのですか。」      

先輩「民間企業でも給与の源泉徴収票に、社員本人や家族のナンバーの記載が必
   要になることはその1で勉強したよね。源泉徴収票以外でも、原稿料や講
   演料、不動産使用料の支払調書などにも相手のナンバーが必要になるんだ
   よ。だから企業は、関係する人から事前にナンバーを取得しなければなら
   ないわけさ。そして当然、何らかの方法で本人確認も必要になると思うよ。」

 私 「なるほど。税務署ではそのナンバーで本人の申告内容と突合して、申告漏
   れがないか確認するということですね。」              

先輩「そういうこと。だから税務署等へ提出するほとんどの調書には、相手のマ
   イナンバーの記載が必要になるわけだね。例えば、誰かにセミナーの講演
   をしてもらったとするよ。帰る時には、『講演ありがとうございます。こ
   ちらはお約束の謝金です。ところで税務署へ提出する支払い調書に記載が
   必要なので、先生のマイナンバーを教えて下さい。それと本人確認できる
   ものをお願いします!』という感じになるのかな。」         

 私 「とっても面倒な気がしますけど.....。」              

先輩「かなり大変だよ。しかも最大の問題は、その取得した膨大なマイナンバー
   情報を、絶対に漏えいさせない体制をどう構築するかだろうね。取扱い部
   署や担当者を制限したり、規程の整備や社員教育も必要になると思うよ。」

 私 「たしかに。万一漏えいした場合の『懲役4年、罰金200万円、会社の信
   用失墜に経営者責任』は、間違いなく会社の存亡に関わる重大なリスクで
   すからね。そういえば法人にもマイナンバーが交付されますけど、法人ナ
   ンバーのセキュリティ対策も、個人ナンバーと同じでいいですよね?」 

先輩「あれ、言ってなかったかな。対策は個人のマイナンバー情報だけで、法人
   のマイナンバーには、規制も罰則もないからセキュリティ対策はいらない
   よ。おっと、紙面の都合で今回はここまでだね。To Be Continued!」 

 私 「えっ、法人は対象外なの??」                   

 個人番号の陰に隠れて、ほとんど目立たない法人のマイナンバー。次回は、法人ナンバーに秘められた本当のパワーを見ていきましょう。

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その4 法人にもマイナンバー!そして国の管理が始まる!

 過去にも「個人情報保護法」や「日本版SOX法」など、企業の情報管理に重大な影響を及ぼす法律が導入されたことがありました。しかし個人情報保護法は一定数の個人情報を扱う事業者のみが、またSOX法は基本的に上場企業だけが対象でした。これに対してマイナンバー法は、ほとんどの企業が対象になることから、その影響は消費税の導入と同規模とまでいわれています。さて、今月もマイナンバー制度について見ていきましょう。なお、本稿は平成27年2月10日現在の内容です。


 私 「先輩!前回、『法人のマイナンバーにはセキュリティ対策がいらない』と
   いうことで話が終わりましたよね。でもマイナンバーは全ての個人と法人
   に交付されるのに、なぜ法人ナンバーだけ対策がいらないのですか?」 

先輩「マイナンバー法が罰則の対象としているのは、あくまで個人番号を含む 
   『特定個人(・・)情報』だけなんだ。法人のナンバーは個人のナンバーと
   違って悪用の危険が少ないから漏えいに関する罰則もなく、マイナンバー
   法の保護対象になっていないわけだね。しかも法人情報だから、個人情報
   保護法の保護対象にもならないんだよ。」              

 私 「つまり個人のナンバー情報の漏えいは大問題だけど、法人のナンバー情報
   は、漏えいしても何の問題もないから罰則もないということですか。」 

先輩「その通り。罰則どころか、むしろ法人のマイナンバー情報は、国税庁のホ
   ームページで一般に公表して誰でも自由に使えるようにするらしいよ。ナ
   ンバーの不正利用に厳罰を科している個人番号に比べると、法人番号はあ
   まりの『ゆるい対応』に、ちょっと困惑するだろう?」        

 私 「本当ですね。でも法人のマイナンバーって何に使うのですか。」    

先輩「そう、そこが問題だよ。一般論としては、行政機関ごと法人に対してバラ
   バラな番号を付けて管理しているのを、マイナンバーに統一すれば、行政
   の業務が効率化できるといわれているよね。」            

 私 「はあ、それは勉強したのでわかりますけど...単純にそれだけですか?」

先輩「おっ、いい勘してるね!本当の使い道はそれだけではないと僕も思うよ。
   例えば、食料品などへ消費税の軽減税率を導入する場合、事業者が発行す
   る軽減税率の明細書(インボイス)を証明書として利用する方法が検討さ
   れているけど、発行した事業者を特定するには、法人のマイナンバーを利
   用するしか方法がないともいわれているね。」            

 私 「なるほど、将来的には支払った消費税の証明(インボイス)に、発行法人
   のマイナンバーが利用される可能性があるということですね。」    

先輩「それ以外でも、国は『マイナンバーを使って、個人や法人の所得を正確に
   把握して、脱税防止につなげる』と説明しているよ。」        

 私 「ええ、それも勉強しました。たしか...税務署等へ提出する調書に、個
   人ナンバーや法人ナンバーを記入することで、簡単に名寄せができるから、
   申告漏れの防止に利用できるということでしたよね。」        

先輩「そう、でも『それも本当かな?』って思うよ。だって、提出する調書は今
   までと同じ、変わるのは調書に個人ナンバーや法人ナンバーが記入される
   だけだろう。今でも、調書は名寄せして申告漏れの防止に使っているから、
   単にナンバーで名寄せができるだけのことだよね。まあ名前とかは漢字や
   読み方が難しいから、調書が番号付きで提出されれば、確実に名寄せでき
   るという意味で、多少精度が上がる程度だと思うよ。」        

 私 「じゃあ、ナンバーは脱税防止にほとんど効果がないってことですか?」 

先輩「いや、国が考えているのは、マイナンバーを使った新たな脱税防止策の導
   入だと思うよ。例えば、今年の税制改正大綱には、『銀行等に対して、預
   貯金口座をマイナンバーで検索できるように義務付けて、資金移動や残高
   を簡単に把握できるようにする』という案が盛り込まれているんだ。」 

 私 「なるほど、それで脱税を発見するわけですね。最近流行のFXなどの金融
   所得や、ネット副業なども把握できそうですね。」          

先輩「脱税防止だけじゃないよ。例えば多額の預金があるのに、生活保護を不正
   受給することもできなくなるよね。そして国の本当の狙いは、財源が厳し
   い介護や医療、年金への利用だと思うよ。例えば、定年退職して収入が無
   いから介護保険の本人負担が1割の人でも、もし預金が1,000万円以上あれ
   ば3割にするとか、年金を一部カットするとか、支給開始年齢を引き上げ
   るとか、幾らでも考えられるだろう。病院の窓口負担だって同じことさ。
   おっと、もう少し説明したいけど、To Be Continued!」        

 私 「なるほど、マイナンバー制度の導入は、サラリーマンの内緒のアルバイト
   を見つけるというような小さな話ではなさそうですね。」       

 次回はマイナンバーの限界と導入スケジュールを考えてみます。

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その5 国の思惑・マイナンバーの限界

 今年の税制改正では「預金情報の効率的な利用」を目的に国税通則法を改正して、金融機関に「マイナンバーで検索できる状態で預貯金情報を管理する義務を課す」ことが決定されました。企業側にはナンバー漏えいに対して重い罰則を科す反面、国側はナンバーを自由に利用して個人口座の中身を知りうる立場になるわけです。行き過ぎた国側の監視強化や企業の事務負担増を懸念する声も聞こえてきます。当初は任意でスタートするナンバーと預金口座の紐付けですが、2021年をめどに完全義務化が検討されているようです。なお、本稿は平成27年4月10日現在の内容です。


 私  「先輩!前回は驚きましたよ。国はマイナンバーを利用して、税や生活保
   護等に関する不正の排除だけでなく、社会保障の財源確保にも利用する
   大掛かりな仕組みを考えているかもしれない、ということでしたよね。」

先輩 「そうだね。預金口座をマイナンバーで紐付けして、いつでも検索できる
   ようにすれば、脱税や生活保護の不正受給が防止できるし、例えば一定
   額以上の預金がある人には、介護保険や医療保険の自己負担額を増やし
   たり、受給している年金をカットすることも仕組みの上では可能だろう。
   まあ、タンス預金をどうするか、という問題は残るけどね。」    

 私  「でも、個人の預金を全て国が把握することに反発が出ませんか?お金の
   情報を国に握られるというのは決して良い気分ではないですよ。」  

先輩 「そこには何らかの対策が必要だろうね。例えば『口座確認は不正の疑い
   がある場合に限る』とかしないと、国が国民の懐をいつでも覗ける仕組
   みは問題があるよ。資産家は銀行預金そのものを利用しなくなるかもね。」

 私 「こんな低金利だとありえない話ではないですよ。それこそ皆がタンス預
   金に切り替えてしまえば、銀行システムが崩壊してしまいます。」  

先輩「それだけじゃないよ。紐付けするには莫大なコストと時間が必要になる
   から、どちらへ転んでも銀行業界は大変だろうね。ペイオフ解禁時の 
   『名寄せ』だって、かなり大変な作業だったらしいよ。」      

 私 「でも、同一名義人の『名寄せ』が終わっているなら、それにマイナンバ
   ーを紐付ければ良いだけのことじゃないですか。」         

先輩「おいおい、今回は直接本人からマイナンバーを確認しなければならない
   んだよ。住所を変更していない口座とか連絡が取れないケースもあるだ
   ろうし、本人が認知症になっているかもしれない。中には国に管理され
   たくないという理由から手続きに協力してくれない場合だって考えられ
   るだろう。とりあえず金融機関では新規の口座開設分からナンバーの紐
   付けを開始して、その後既存口座へと範囲を広げていくらしいよ。」 
 
 私 「何だか随分と大掛かりな手続きになりそうですね。」        

先輩「そうだね。マイナンバー制度は、運用方法を1つ間違えると、日本中に
   不信感が蔓延しかねない危険を秘めているからね。国は制度のメリット
   をもっと丁寧に説明する必要があると思うよ。」          

 私 「制度のメリット...ですか。そういえば、全ての取引にマイナンバー
   を利用すれば、サラリーマンから不満の根強い農家や自営業者の所得が
   完全に把握できると、何かの本で読みましたよ。」         

先輩「その話は僕も聞いたことがあるけど、『マイナンバーが所得をガラス張
   りにする!』というのは単なる幻想、ありえない話だね。売上を計上せ
   ずに脱税したものをマイナンバーでどうやっても把握できるわけないよ。
   例えばソバ屋で考えてみると、売上の除外を防ぐには飲食時に客がマイ
   ナンバーを提示して、ソバ屋は全ての売上と、それに紐付けした客のマ
   イナンバーを税務署へ申告する。さらに客は、どこで何を食べたかを税
   務署に申告して、税務署がソバ屋の売上データと客が申告したデータを
   チェックしなければ成立しない話だよ。」             

 私 「う〜ん、たしかにそんなことは現実的に不可能ですね。」      

先輩「もっと言えば、自家用車を商売用と偽ってガソリン代や保険料を経費に
   したり、家族の飲食代を交際費にしても、マイナンバーでは防ぎきれな
   いわけさ。そもそも正確に個人の所得が把握できない不公平感から消費
   税が導入されたわけだから、マイナンバーで所得が正確に把握できるな
   ら消費税はいらないってことになるよね。それもおかしな話だろう。」

 私 「結局、ナンバーを将来何に使うかは導入後に考えるということですね。」

 マイナンバーに関する法律を読む限り「行政サービスの利便性向上」という言葉は頻繁に出てきますが、「企業の事務が軽減される」とはひと言も書いてありません。事実を極論すると「行政のために、企業側は大変な負担を強いられる」という厳しい制度です。コストとリスクを負担する経営者としては文句のひとつも言いたいところです。

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その6 住基カード失敗の教訓は生きるか?

 10月に全国民に割り当てられるマイナンバーは12桁。この12桁の番号で、その人の住所、氏名、生年月日はもちろん、所得や税金、年金といった個人情報が全て照会できるようになります。また希望すれば来年から顔写真付きのマイナンバーカード(個人番号カード)が無料で交付されて「身分証明書」としても利用することができます。今回はこのマイナンバーカードの詳細について見ていきましょう。なお、本稿は平成27年5月1日現在の内容です。


 私 「先輩!『身分証明書』と聞いて、小泉政権のe-Japan構想の『住基カー
   ド』を思い出しましたよ。マイナンバーと同じように個人の住民票コー
   ドを利用して様々な行政手続や納税を電子化して、将来は印鑑のいらな
   い社会にするという謳い文句だったはずです。でも利便性は一向に改善
   されていないから、マイナンバーも同じ轍を踏まないと良いですね。」

先輩「そうだね。住基カードは運用開始から13年が経過したけど普及率はわ
   ずか5%前後と低迷したままだし、ほとんどがe-Tax等の電子申告時に
   署名代わりの電子証明書として利用するか、免許証もパスポートもない
   高齢者が身分証明書として代用しているか、というレベルらしいね。」

 私 「マイナンバーが導入されると住基カードはどうなるのですか?」   

先輩 「結論から言えば、現在、住基カードを持っているなら有効期限までは使
   えるよ。でも来年以降にマイナンバーカードの交付を受ける場合は、そ
   の中に電子証明書が標準搭載されるから、今持っている住基カードと交
   換でマイナンバーカードが交付されるという形になるようだね。つまり
   マイナンバーカードと住基カードの両方を持つことはできないというこ
   とだよ。そもそも2枚持つことに意味はないけどね。」       

 私 「何だか混乱しそうです。時系列で見ていくと、まず10月に市町村から
   『通知カード』という紙製のカードが送られてくるわけですよね。」 

先輩「そう、その『通知カード』に自分のマイナンバーや住所・氏名・生年月
   日などの個人を識別する情報が記載されているわけだね。」     

 私 「次に、来年の運用開始にあわせて ICチップ付きのマイナンバーカードが
   無料で交付されるということですが、これは強制ではないですよね。」

先輩「そうだね。あくまでも希望者だよ。でも紙製の『通知カード』で何か行
   政手続をする場合は、運転免許証などの本人確認書類の提示が必要にな
   るけど、本人の顔写真やICチップがついたマイナンバーカードを使う場
   合は身分証明書の提示は不要だからね。」             

 私 「なるほど。それならマイナンバーカードがあったほうが便利ですね。し
   かも無料ですし。交付を受けるには具体的にどうすれば良いですか?」

先輩 「年が明けたら『通知カード』と運転免許証等の本人確認できる書類を持
   って、市区町村の窓口でマイナンバーカードの発行を申請するだけだよ。
   そうそう、住基カードを持っていたら返納することも忘れずにね。」 

 私 「マイナンバーカードが発行されると、そこで住基カードの役割は完全に
   終了するというわけですか?」                  

先輩 「そういうことだね。数千億円の開発費用をかけてほとんど誰も使わない
   住基カードをつくって、杉並区など反対する自治体と裁判にまで発展し
   た住基ネットだけど、結局は壮大な税金の無駄使いに終わりそうだよ。」

 私 「でもマイナンバーカードと住基カードの違いがわかり難いですよね?」

先輩「そうだね。ナンバーは税務関係の書類に記入する機会が増えるけど、カ
   ードは身分証明書やe-Tax等の電子申告で使うくらいだから、当初は住
   基カードと同じような機能しかないだろうね。でも国では、例えば健康
   保険証の機能を追加するとか、住民票をコンビニで受けとれるとか、マ
   イナンバーカードで利用できる機能を段階的に拡大して、最終的には民
   間企業でも活用できるようにするという構想だよ。」        

 私 「それって住基カードの時も同じような事を言っていましたよ。」   

先輩「まあまあ。さしあたり2017年以降にはマイナンバーカードを利用してネ
   ットの専用ページ『マイナポータル』で、自分の個人情報がいつ、何に
   使われたか確認できるようになるらしいよ。しかもスマホでも利用でき
   るようにする方針のようだね。少しは便利になりそうだろう?」   

 私 「スマホですか。利便性と情報漏えいリスクは比例する気がしますが..。」

 政府では年明け早々にマイナンバーカードを無料発行すると発表しました。その背景には住基カードは有料だったから利用が広まらなかったと考えているようですが、無料にすれば普及するというものではありません。この辺りの感覚が少しズレている気がします。「いらないものはタダでもいらない」これが民間の感覚です。

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その7 個人専用ページ「マイナポータル」!マイナンバー収集は難しい!

 全ての個人と法人に番号を割り振って一元管理するマイナンバー制度。今年10月から番号の通知が開始されて、各企業では来年1月以降、給与の源泉徴収票や報酬の支払調書、不動産使用料の支払調書などに、相手(支払いを受ける者)の番号を必ず記載して税務署へ提出することが義務付けられます。そこで今回は税務署へ提出するナンバーの利用方法や、ナンバーを集める時の注意点などを見ていきたいと思います。なお本稿は平成27年6月10日現在の内容です。


 私 「先輩、こんにちは!前回の説明で平成29年以降は、マイナンバーを利
   用したネット専用ページの運用が始まって、そこに接続すれば様々な情
   報が確認できるということでしたが、どうもイメージが湧きません。」

先輩「ああ、『マイナポータル』のことだね。当初は『マイポータル』という
   名称の予定だったけど、『私のマイナンバー』と同じで『私のマイポー
   タル』と言えば『私の私のポータル』になってしまうから、わざわざ 
   『マイナポータル』に名称を変更したんだろうね。」        

 私 「なんだか先輩とのやり取りを聞いていたかのような対応ですね。それで、
   私がマイナポータルに接続すると何がわかるのですか?」      

先輩「そう、そこだよ。自分の情報を、いつ、誰が、何の目的で利用したか確
   認できたり、年金や介護保険料の納付状況はもちろん、行政機関からの
   お知らせ等も届くようだね。さらには給料や報酬などの受取状況も確認
   できるようになるんだよ。なぜなら君に給料や報酬を支払った企業側が、
   君のナンバーを記載して税務署へ金額を報告するから、それが君のマイ
   ナポータルにも反映される仕組みになるわけだね。」        

 私 「なるほど、でも『色々と確認できる』というレベルですか?」    
    
先輩「いやいや、将来的には各企業から集まった給料や報酬等の情報から、一
   括して確定申告できるようにするらしいよ。今は源泉徴収票を集めて1枚
   1枚情報を入力する必要があるけど、それも不要になるわけだ。」   

 私 「ということは、正確にマイナンバーを収集して記入しないと、とんでも
   ない結果になるかもしれませんね。他人の給料に課税されたりとか?」
   
先輩「可能性はあるだろうね。だから各企業に対して、全社員のマイナンバー
   を確認させて、それを給料や社会保険関係の書類に記載することを義務
   付けたわけだね。パートやアルバイトも対象だからその数は膨大だよ。」

 私 「相変わらず何でも企業へ押しつけますね。実際は大変な作業ですよ。」
  
先輩「たしかに。社員本人だけでなく扶養家族のナンバーも必要だからね。し
   かもナンバーが絶対に漏えいしない体制も整える必要があるわけだ。」

 私 「そうすると、もう7月なので各企業では着々とナンバーの取得方法や管
   理方法といった準備を進めているということですかね。でも私の周りで
   はそういう話をほとんど聞きませんけど。」            
  
先輩「実際は『何から手をつけて良いかわからない』というのが企業側の本音
   だろうね。だから『まだ何もしていない』ところが多いようだよ。それ
   に国の広報不足もあって、企業側の対応がかなり遅れているらしいね。」

 私 「な〜んだ安心した。それなら当社も慌てないで、通知カードが社員に届
   く10月になってから順次対応すれば良いですよね。」       

先輩「いやいや、それだと遅いと思うよ。だって中には通知カードが届かない
   社員もいるからね。現状だとナンバーの通知は住民票のある住所地に簡
   易書留で郵送される予定だから、事情があって住所変更をしていない人
   は、手元に通知カードが届かない可能性があるわけさ。」      

 私 「えっ、そもそも通知が届かないとナンバーの確認ができませんよね。」

先輩「だから、今の内からナンバーを扱う担当者や担当部署を決めて、社員に
   対して、本人やその扶養家族の住所が正しいか確認を呼びかける必要が
   あるわけだね。それでも実務上は難しい場面も多いと思うよ。」   

 私 「難しい場面?住所地に正しく住民票を移してもらうだけですよね。」 

先輩「あまり表に出ていないけど、現実にはストーカー被害や夫のDVから逃げ
   るために引っ越したけど、住所が知れるのが恐くて住民票を移せないと
   いうケースも多いんだよ。それに、もし社員が勇気を出してそのことを
   会社に告げたとしても、『そうか大変だね。では君だけ特別にナンバー
   を会社に知らせなくてもいいよ』という訳にはいかないからね。」  

 私 「ちょっと待って下さい。その場合はどうしたら良いのですか?」   

先輩「国では住民票とは別の送付先を事前登録させて、そこに送付することを
   検討中とあったけど、まあ、あまり期待できないだろうね。」    

 私 「そこまで考えると、本当に運用できるか不安になってきましたよ。」 

 企業に多くの面倒な作業を任せる分、今後は行政側にもきめ細かい対応が期待されます。

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その8 究極の個人情報「マイナンバー」!セキュリティは大丈夫?

 いよいよ10月からマイナンバーの通知が始まりますが、ナンバーは独自の計算式で自動的に割り当てられるため、自動車のナンバーのように好みの数字を選択することはできません。個人番号は数字のみで12桁。はたして栄えある「000000000001」は誰になるのか。ネット上では「天皇陛下では?」という噂も散見されますが、もともと天皇陛下には住民票がないので付番はされないようです。また税や社会保障に関しても、皇族の方は対象外なのでナンバーは必要ありません。さて、今月はマイナンバー制度のリスクについて考えてみます。なお本稿は平成27年6月12日現在の内容です。


 私 「先輩、聞いて下さい!先月、DVやストーカー被害にあった人は、引っ
   越しをしても住民票を移さないから通知カードが届かないという話があ
   りましたよね?実は1人いたんですよ。そういうパート社員が。夫のD
   Vが酷くて数ヶ月前に子供を連れて自宅を出たそうです。」     

先輩「やっぱりね。それで会社はどう対応したの?」           

 私 「警察に協力をお願いして、ご主人に今の住所が知られないように住民票
   の閲覧交付制限をかけて、何とか現住所に住民票を移してもらいました
   よ。ただ、元の住所があった市役所へ転出届を出しに行く時は、『夫に
   ばったり遭ったらどうしよう』とか『見張っていたらどうしよう』と不
   安がっていたので、仕方なく一緒について行く羽目になりましたけど。」

先輩「それは大変だったね。でも、そこまでして会社が取得した彼女のナンバ
   ーが、もし漏えいしたらどうなるかな?漏れた番号で突き合わせすれば
   芋づる式に他の情報が引き出される可能性もあるだろうね。彼女の住所
   なんか簡単にご主人にバレてしまうかもしれないよ。」       

 私 「恐い事を言わないで下さいよ。そうならないように今必死でセキュリテ
   ィ対策中なんですから。でも他の企業はどう対応しているのですか?」
       
先輩「まあ、一応は国のガイドライン通りのセキュリティ対策に取り組んでい
   るけど、現実は『漏えい』とか『罰則』といった言葉だけが一人歩きし
   ていて、リスクが明確に見えていない感じだね。つまり、もしナンバー
   が漏えいしたときの『被害が何か?』がわかっていないと思うよ。国も
   その重大なリスクをあえて曖昧なままにしてあるからね。」     

 私 「そう!DV被害の彼女は別にしても、ナンバーが漏えいして住所や名前、
   性別がわかったところで、何の被害があるのか良くわかりません。被害
   が見えないからセキュリティ対策のコストも見積もれないのが本音です
   よ。ナンバー管理用のエクセルにパスワードを設定する位ですかね?」

先輩「まあ、今はただの『からの箱』だからね。でも来年から運用が始まると
   給料や報酬といった情報や、健康保険や年金に関する情報がマイナンバ
   ーに紐づいて『からの箱』に入ってくるわけだよ。将来的には納税額や
   証券情報、医療分野に預金口座まで紐づけされて箱に入る予定だからね。
   もしその箱を開ける鍵のナンバーが漏えいしたらどうなると思う?」 

 私 「ちょっと待って下さい!そうなればナンバーは究極の個人情報ですよ。
   漏えいなんて絶対に許されない話です。どうして国側はもっと漏えいの
   リスクを広報しないんですか?なんだか見切り発車する感じですよね。」

先輩「だって、リスクがわかると国民が反対するだろう?マイナンバー導入の
   歴史は1980年代、大平内閣の『グリーンカード制度』まで遡るからね。
   当時から脱税防止に個人番号の利用が検討されてきたけど、『情報漏え
   い』や『プライバシーの侵害』を理由に幾度も頓挫を余儀なくされたわ
   けだ。しかも国民大反対の中で、強引に導入した『住基ネット』は大失
   敗。その逆風の中、2年前にやっと成立させたマイナンバー制度だよ。
   反対されて廃案に追い込まれたら大変だろう?だから今はまだリスクを
   大々的に広報できないというのが国側の心情だろうね。」      

 私 「でも、このまま漏えいリスクを隠し続けたら、本気でセキュリティ対策
   しないまま運用を開始する中小企業はかなりの数になると思いますよ。」

先輩「そうかもしれないね。だからセキュリティ対策が甘い導入期に大勢のマ
   イナンバーを集めて、将来、ナンバーに色々な情報が紐付けされてから
   悪事に利用する輩もいるだろうね。ナンバーは原則変更できないわけだ
   から。ベネッセ事件の時に個人情報を転売する『名簿業者』の存在が明
   るみに出たけど、もしかして将来高値で売買されるかもしれないよ。」

 私 「当初は市役所とか税務署、社会保険事務所などの行政機関にナンバーが
   集中することになりますよね。でも最近の公務員の不祥事を見ていると
   行政機関からの漏えいが一番怖いという気がしなくもありませんが..。」

 私達もマイナンバーを含めた情報が広く利用される可能性があることを自覚して、情報の提供を最小限にするなどの自助努力が必要です。

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その9 必見!上野会計はマイナンバーをサポートします PART1

 マイナンバー制度の運用がはじまる来年は、日本中が不慣れなことも手伝って、あらゆる場面でナンバーの漏えいが発生する可能性があります。ナンバーを悪用する輩にとっては狙いやすい絶好のタイミングです。通知カードが届く10月から来年1年間は脇を締めてナンバーを管理する必要があるでしょう。さて、今回は従業員から収集したナンバーを絶対に漏えいさせないために、上野会計が顧問先企業に提供する方法を具体的に紹介します。なお本稿は平成27年7月13日現在の内容です。


 私 「こんにちは、先輩!前回の勉強で自分の給料や年金、預金や医療といっ
   たあらゆる情報の入った箱を開ける鍵がマイナンバーだと知って、何だ
   か恐くなりました。もし自分のナンバーが漏えいしたらと思うと・・・。」

先輩「そうだよね。具体的に何が起こるかわからないけど、他人のナンバーを
   使って勝手に婚姻届や離婚届を出されたり、住民票が勝手に移転された
   りといった可能性はあるかもしれないよ。」            

 私 「でも、そんなに簡単にマイナンバーが漏えいしますか?」      

先輩「今の状況なら漏えいするだろうね。6月にも日本年金機構の年金情報が
   大量に漏えいしたばかりだろう。つまりマイナンバーも一定の確率で 
   『絶対に漏えいする』と考えるのが普通だと思うよ。」       

 私 「でも、国ではナンバーの利用範囲をいずれ民間企業にまで広げる予定で
   すよね。利用範囲を広げれば、当然それだけ漏えいのリスクが高まりま
   す。先輩の言うように『絶対に漏えいする』なら、国だって利用を抑制
   しませんか。しかも制度を導入した責任だってあるだろうし。」   

先輩「それはちょっと甘いね。良く考えてごらん。民間企業のナンバー利用 
   は、もう来年から実際に始まるんだよ。給与事務や法定調書の作成で社
   員やその家族など大量のマイナンバーを企業で取り扱うだろう。中小零
   細企業から個人事業に至るまで対象になるから、日本年金機構から年金
   情報が漏れるのとは比較にならないほど簡単に流出すると思うよ。」 

 私 「まさか?流出させたら罰則ですよ。しかも企業の信用問題にもなります
   し、そんなデメリットの大きい制度を国が導入しますか?」     

先輩「おいおい、さらに甘いね。そもそも国としてはナンバーが『絶対に漏え
   いする』ことは、マイナンバー制度を設計する段階で既に織り込み済み
   だと思うよ。要は、例えナンバーが漏えいしたとしても、そのデメリッ
   トよりもナンバー制度を導入するメリットのほうが大きいと判断した結
   果だろうね。しかも漏えいの罰則や被害を受けるのは、流出させた者と
   流出させた企業、それと流出された本人だけで、国は関係ないから  
   ね。」                             

 私 「ええっ?初めから漏えいする前提なら、企業側はどうやって社員やその
   家族のナンバーを守れば良いのですか?もし我が社から社員のマイナン
   バーが漏えいしたら会社の存続に関わる大問題ですよ。」      

先輩「その秘策は1つしかないだろうね。つまり君の会社内に、社員や家族の
   マイナンバーが無ければ絶対に漏えいしない!そうだろう?」    

 私 「ちょっと待って下さいよ。たしかにその通りですが、扶養控除申告書に
   本人のナンバーや家族のナンバーが必要ですよね。そのために企業では
   本人や家族のナンバーを収集します。それをどうすれば良いのです  
   か?」                             

先輩「じゃあ特別に上野会計で採用する方法を教えよう。まず社員は自分のス
   マホやパソコンから、扶養控除申告書に必要な自分のナンバーや家族の
   ナンバーを直接入力して、それをTKCへ送信するんだ。TKCではそ
   のナンバーを暗号化して堅牢なデータセンターで保管するわけだね。」

 私 「えっ!社員や家族のナンバーを自分の会社で保管しないのですか?」 

先輩「こういっては悪いけど、漏えいの蓋然性が高い君の会社を通さないで、
   セキュリティの完璧なTKCのデータセンターで直接保管して貰う方が
   安全だし、君の会社にとっても安心だろう。」           

 私 「でも社員の本人確認が必要ですよね。」              

先輩「ああ、それは社員がナンバーを送信する時に、通知カードと免許証の画
   像ファイルを添付するだけさ。君の会社の担当者はTKCのデータセン
   ターに接続して、必要な時に必要な部分を確認すれば良いわけだよ。勿
   論、接続には暗証番号が必要で、いつ誰が接続したかログも残るから 
   ね。」                             

 私 「それは凄い!でも利用するのにかなりのお金がかかりそうですね。」 

先輩「いや、上野会計ではTKCの給与計算ソフトを利用している全ての顧問
   先に、このシステム(PXまいポータル)を無料で提供することを決定
   したんだよ。ナンバー漏えいが大問題になるのは間違いないだろうから
   ね。」                             

 私たちは「PXまいポータル」を利用して、企業からのナンバー漏えい防止を全力でサポートします。次回はその詳細を見ていきます。

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その10 必見!上野会計はマイナンバーをサポートします PART2

 本稿を読んでいる頃には既に通知カードが配賦され、社員の皆さんからナンバーの提出を受けているのではないでしょうか。さて、その収集したマイナンバーの管理はどうしていますか?ナンバーは一定の確率で『絶対に漏えいする』と先月号で書きましたが、それを裏付けるように、今秋からナンバー流出の被害を補償する損害保険が販売されています。そこで今月も先月号に引き続き、ナンバーの漏えい防止に上野会計が提供しているTKCのクラウドサービス、「PXまいポータル」の概要をご紹介します。なお、本稿は平成27年9月1日現在の内容です。


 私 「こんにちは先輩!先月教えてもらったナンバー漏えい防止策は、目から
   ウロコでした。まさか社員本人が、スマホやパソコンから自分や家族の
   ナンバーを直接TKCのデータセンターに送信して保管するとは...驚き
   です。たしかにナンバーが社内に無ければ漏えいしようがありません 
   ね。」                             

先輩「その通りだよ。上野会計がナンバーの漏えい防止に利用するのはTKC
   給与計算システム(PX)のオプションで、『PXまいポータル』とい
   うシステムだよ。TKCの給与システムを利用している顧問先に無料提
   供しているんだ。社員から集めたナンバーを社内のパソコンではなく、
   TKCのデータセンターで保管するから漏えいや紛失の心配がないわけ
   さ。」                             

 私 「でも、TKCデータセンターから流出することは考えられませんか?」

先輩「『絶対』ということはないけど、TKCデータセンターは全国の会計事
   務所やその顧問先企業、地方公共団体などのデータを預かる日本最大級
   のデータセンターで、セキュリティ対策や防災対策は日本屈指だよ。も
   し気になるならTISC(TKCインターネットサービスセンターの略)
   でネット検索してごらん。どれだけの施設かわかると思うよ。」   

 私 「なるほど、先輩の話を聞いただけで、少なくともエクセルに暗証番号を
   付けて保管するレベルとは全く次元が違うことはわかります。それで具
   体的にはどんな仕組みになるのですか?」             

先輩「まず、社員がスマホやパソコンから、扶養控除申告書の記入に必要な本
   人や扶養家族のマイナンバーなどの情報を直接Web画面に入力して、
   TKCのデータセンターに送信するんだ。一緒に本人確認資料として、
   通知カードや免許証などの画像ファイルの添付も必要だよ。データセン
   ターでは送られてきたナンバーを暗号化して保管するわけだね。」  

 私 「会社側では、その内容をどうやって確認するのですか?」      

先輩「会社の事務担当者は、必要な時にデータセンターにアクセスすれば、保
   管されているマイナンバーや画像データをいつでも確認できるわけさ。」

 私 「誰かが事務担当者になりすまして、アクセスする危険はないですか?」

先輩「そこは大丈夫だよ。まずデバイス認証でアクセスできるパソコンが制限
   されているし、アクセス時にはIDとパスワードが必要だから、誰でも
   簡単にアクセスできるわけではないよ。しかもアクセス記録(ログ)が
   自動保存されるから、誰がいつアクセスしたかもわかるんだ。」   

 私 「でも社員自身にマイナンバーを入力させるのは大変ですよね。」   

先輩「そうかもしれないけど、『PXまいポータル』を利用すると、社員はい
   つでも給与明細や源泉徴収票を自分のスマホやパソコンで閲覧できるよ
   うになるから、社員にとっても便利になると思うよ。しかも今月分だけ
   でなく過去2年分を見ることができるからね。」          

 私 「つまり紙の給与明細が無くなるわけですね。それは便利です。正直、紙
   の給与明細は誰かに見られたら困るので、燃えるゴミには出せず、自宅
   にシュレッダーもないので処分に困っていたところですよ。」    

先輩「そう言ってくれると嬉しいね。企業側でも給与明細を紙へ印刷したり、
   封筒に入れて社員に配賦する手間がなくなるから、かなり効率的だよ。」

 私 「マイナンバーの導入で世の中が大きく変化しそうですね。」     

先輩「もしかすると『振り込め詐欺』ならぬ『マイナンバー詐欺』なんて犯罪
   が出てくるかもね。例えば『甲府市役所の住民税課の鈴木といいます。
   お宅の会社のサイトウタロウさんですが、市内に同姓同名が大勢いるん
   ですよ。申し訳ありませんがサイトウの字は斉藤、斎藤、齊藤、齋藤の
   どれかということと、念のため本人のマイナンバーを教えてくれません
   か?』『ああ、サイトウですよね。えーと、字は普通の斉藤で、ナンバ
   ーは・・・』はい、残念ながらこれで見事に漏えいだよ!」     

 マイナンバーは必ず漏えいするという前提でナンバーを扱うことが必要です。だからこそ最も安全な方法で、最も安全な場所へ保管して、少しでも自社の漏えいリスクを軽減するべきだと思います。当たり前のことですが、自分の身は自分で守るしかありません。

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その11 マイナンバーを取得できない人達

 そもそも国は、全国民がマイナンバーを取得できるという前提でナンバー制度を推し進めていますが、現実にはナンバーを取得できない人達が大勢存在しています。そこで今月は、炙り出されたナンバー制度の陰の問題について一緒に考えてみます。なお、本稿は平成27年9月30日現在の内容です。


 私 「こんにちは、先輩!先日、自宅にマイナンバーを知らせる通知カードが
   届きましたよ。各企業でもさっそく社員のナンバー収集をはじめたよう
   ですね。その影響で、馴染みのスナック『魔女』では、私のお気に入り
   だった美紀ちゃんが辞めてしまったんですよ。それと我が家の新聞配達
   のお兄さんも別の人に変わってしまいました。何だか大変ですよね。」

先輩「おいおい、いったい何の話だよ。マイナンバーの勉強だろう?」   

 私 「もちろんですよ。企業側がマイナンバーを知らせるように言ったら、美
   紀ちゃんも新聞配達のお兄さんも辞めてしまったという話ですよ。今ま
   で身分証明とか身元保証とかにうるさくなかった業界では、色々な理由
   で住民票を移せない人が大勢働いていたことがわかりました。」   

先輩「なるほど、アルバイトや日雇いの業界にも影響が出ているわけだ。」 

 私 「ナンバーの導入で本人も困ったでしょうが、一番の被害者は企業側です
   よ。ママも美紀ちゃんが辞めてお客さんが激減したと嘆いていましたし、
   新聞店でも代わりの人を探すのに四苦八苦だったようです。」    

先輩「セミナーでは『ナンバーの不提出者には懲罰規定を作って対応すれば良
   い』とか簡単に言っていたけど、現実はそんな甘い話ではなさそうだ 
   ね。」                             

 私 「美紀ちゃん達のようにナンバーが届かない人はどうなるのですか?」 

先輩「まあ、ナンバーが届かない人の中には、単に理由があって住民票が移せ
   ない人と、住民票そのものがない人も結構いるからね。ナンバーが届か
   ないと税金の申告や社会保障の手続ができないし、将来的には預金口座
   も開設できなくなるから、いずれ本人が困ると思うよ。住基ネットの時
   のように、『届かなくてもまあ良いか』とはならないだろうね。」  

 私 「えっ!ちょっと待って下さい。住民票のない人って…?」      

先輩「あまり知られてないけど、居住実態がない人は市町村長の職権で住民登
   録が抹消されるわけだ。そうなると戸籍はあっても住民票がないからナ
   ンバーは発行されないよね。理由は色々あるけど住民登録をせずに偽名
   で暮らしていたり、ホームレスになっているようなケースもあるだろう
   ね。こういった住民票のない人は全国で50万人以上いるらしいよ。も
   っと言うと戸籍がない人も存在するからね。」           

 私 「戸籍がないって....。そんなことありますか?」        

先輩「法務省が把握しているだけで500人以上、実態は1万人以上の無戸籍
   者がいると言われているよ。」                  

 私 「でも、日本人なら絶対に戸籍があるはずですよね。」        

先輩「まあ難しい説明は省くけど、例えば、夫のDVで逃げた妻が離婚できな
   いまま、別の男性との間に子供ができたとしよう。でも民法では、その
   子供は戸籍上の夫との子供とみなされるから、それを避けるために出生
   届けを出さないとかね。そうすれば無戸籍の子供になってしまう。小学
   校や中学校へも通えないし、悲惨な状況が社会問題になっているんだ。」

 私 「で、追い打ちをかけるようにマイナンバーも発行されないわけですね。」

先輩「そういうこと。DV被害者など住民票を移せない人に対しては、住んで
   いる場所で通知カードを受け取れる特例ができたけど、国側では住民票
   がない人や戸籍がない人の社会的救済は念頭にないようだね。だから住
   民票のない人が、生活保護申請をしようとしても申請書にマイナンバー
   が記入できないから受給できないわけだ。そして一番の問題は、社員の
   中に該当する人がいた場合に、会社はどう対応すれば良いかということ
   だよ。優秀な社員が、美紀ちゃんのように自ら辞めて行くことのないよ
   うに会社側も配慮する必要があると思うよ。」           

 私 「そうですね。ナンバーの提出がない社員を一緒くたにしないで、単に提
   出を拒否している人と、提出したくても色々な事情があってナンバーが
   取得できない人を分けて考える必要がありますよね。」       

先輩「提出を拒否する社員は別として、ナンバーが取得できない社員について
   は、本来制度を導入した国が何らかの救済方法を考えるべきだと思うけ
   ど、残念ながら今の所は会社側で対応するしかなさそうだね。」   

 私 「第2、第3の美紀ちゃんが出ないように我が社でも対応を考えます。」

 今後どれだけ便利な世の中になるのかわかりませんが、自分の存在を証明する手段が12桁の番号というのは、ある意味、機械的で危うい気もします。

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その12 漏洩の危険性と緊急改正

 いよいよ来月、平成28年1月から現実にマイナンバーの運用が始まります。そして1年後の平成29年1月には、国民1人1人のWebサイト「マイナポータル」の提供も開始する予定です。不確定要素の多い中、性急過ぎるきらいのあるマイナンバー制度ですが「今や待ったなし」の状況です。今月は新たに浮上したマイナンバー漏洩の危険性と、それに対応した緊急改正の内容を見ていきましょう。


 私 「こんにちは先輩!早速質問ですが、昨夜の無尽で『本人へ渡す源泉徴収
   票にはマイナンバーを記載してはいけない!』って聞きましたが本当で
   すか?たしか『マイナンバーを記載して交付する』という話でしたよね。」

先輩「そう、君の記憶が正しいよ。もともと源泉徴収票には『本人及び扶養親
   族のマイナンバーを記載して交付する』と決められていたんだ。ところ
   が10月2日に所得税関連法が緊急改正されて、『本人へ交付する源泉
   徴収票等には、マイナンバーの記載は一切しない』と変更されたわけだ
   ね。」                             

 私 「じゃあ、昨夜の話は本当ですね。でも、どうして変更されたのですか?」

先輩「まあ、色々な問題が浮上してきたからだと思うよ。例えば、社員にナン
   バーが記載された源泉徴収票を交付して、保育園で必要だからとか、住
   宅ローンの申し込みに必要だからと、そのまま渡したらどうなるかな?」

 私 「どうなるって...、あっ!ナンバーが記載されたままですよ!」  

先輩「そう、気がついたね。交付する源泉徴収票にナンバーが記載されていた
   ら大変なことになるだろう。他にも自動車事故などで保険会社に休業損
   害を請求する時なども、源泉徴収票を提出することがあるから、色々な
   場面でナンバーが漏洩する危険があったわけだよ。」        

 私 「なるほど、だから国は慌てて改正したわけですね。」        

先輩「改正前の情報では、源泉徴収票を銀行等へ提出する時はナンバーをマス
   キングするとか、会社へ依頼してナンバーの記載のないものを再発行し
   てもらうとか、手間の掛かる対応策が本気で検討されていたからね。」

 私 「社員自身も源泉徴収票にナンバーが記載されていることについて、それ
   が漏洩したら大変なことになるという認識は低いと思いますよ。その意
   味では改正されて良かったと思います。」             

先輩「まあ実務業界でも、本人交付用の源泉徴収票等へのナンバー記載はリス
   クが高いので、取り止めるように国へ強く働きかけていたからね。」 

 私 「つまり、ここまでを整理すると、改正によって本人へ交付する源泉徴収
   票等にはマイナンバーの記載は一切しない。でも税務署や市町村への提
   出用には原則通りマイナンバーの記載が必要ということで良いですか。」

先輩「そういうことだね。ただし源泉徴収票等は、税法で本人交付が義務付け
   られている法定書類のため改正法の対象となってナンバーを記載しない
   のに対して、例えば自営業者が住宅ローン等を申し込む際に使用する確
   定申告書のなどは、もともと作成が義務付けられた法定書類ではない
   から、番号法の原則からマイナンバーを記載してはいけないわけだね。
   もっとも現時点では、確定申告書の控にナンバーの記入欄があるかどう
   かもわからないけど。いずれにしても本人に交付する書類や控には『ナ
   ンバーは一切記載しない』と覚えておけば間違いないと思うよ。」  
 
 私 「しかし制度の運用直前になって『よく考えたら漏洩しそうだから法改正
   する』という国の安易な対応は相変わらずですね。」        

先輩「そう思うよ。でもね、個人や企業からの漏洩よりも、本当に怖いのはネ
   ットでのサイバー攻撃で、公共機関から一気に大量のマイナンバーが漏
   れることだろうね。特に防御が手薄なマイナンバー運用開始の時期、つ
   まり今頃に攻撃が集中しているかもしれないよ。」         

 私 「えっ、それって大丈夫なんですか?」               

先輩「大量流出すれば、制度の存続も含めて国側は大問題だけど、まだ大切な
   情報が入っていないから国民に大きな被害が出ることはないと思うよ。
   悪用されるのは『マイナポータル』が提供される平成29年以降だろう
   ね。いずれ給与や預金、年金などの情報がネットで紐付けされるからね。」

 私 「でもマイナンバーが漏れるとマイナポータルへアクセスされませんか?」

先輩「そこは勘違いが多いけど、マイナンバーだけでマイナポータルを開くこ
   とはできないよ。今検討されているのはマイナンバーカードのICチッ
   プ情報とパスワードだね。だから思っているほど簡単には漏洩しないは
   ずだよ。でもマイナンバーカードが盗まれて、さらにサイバー攻撃でパ
   スワードが漏洩したら、それこそ全ての情報が漏れてしまう危険はある
   けどね。本気で漏洩した情報が悪用されるのはそこからだと思うよ。」

 私 「なるほど、それを聞いて少し安心しました。」           

 なお、本稿は平成27年10月20日現在の内容です。

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その13 不祥事の実態とマイナンバー対策費の処理

 いよいよ運用を開始したマイナンバー制度。しかし制度をめぐっては、昨年暮れから誤記載、別人への交付等の漏洩問題や、厚生労働省職員の不祥事まで発覚し、「こんなことで本当に大丈夫?」と、国民の不安は募るばかりです。今回は不祥事の実態とマイナンバー対策費の処理について考えてみます。なお本稿を書いている平成27年12月2日の山日新聞には「マイナンバー、県内27,000通返送!」という悲惨な見出しが躍っています。皆さんがこの原稿を読む頃には解決していることを願います。


 私 「明けましておめでとうございます!ついにマイナンバー制度の運用が始
   まりましたね。しかし、昨年10月に通知カードが発送されてからの国
   側の対応のお粗末さには呆れましたよ。本当に大丈夫でしょうか?」 

先輩「まあ、君が不安に思うのも無理ないよ。僕も『いつか必ず流出する!』
   と断言していたけど、最初の内は慎重に進めるはずだから暫くは大丈夫
   だろうと思っていたら『出るわ、出るわ』で、驚くばかりだよ。配達ミ
   スや書留への偽装サイン、住民票へのナンバー誤記載に、厚生労働省の
   システム絡みの収賄事件まで、民間企業にあれだけ厳しく罰則を科して
   おいて自分たちは一体何?って感じだろうね。」          
  
 私 「そりゃそうですよ。我が社でも昨年末に漏洩防止の対策として、かなり
   の金額をかけて給与計算ソフトをマイナンバー対応用にカスタマイズし
   て準備しましたからね。しかもソフトウエアは無形固定資産だから一度
   に経費にならないし...本当に大変ですよ。」          

先輩「えっ?今まで使っていたソフトをマイナンバー対応用にヴァージョンア
   ップした支出だよね。それって番号法の『安全管理措置』という法律に
   沿った改修費用だから全額が『修繕費』として経費処理できるはずだ 
   よ。」                             

 私 「そうなんですか?つまり、マイナンバーのセキュリティ対策のためのソ
   フト費用は一度に経費にしても良いということですね。」      

先輩「いや、そうではないよ。あくまでも既存のソフトに対して、番号法とい
   う新たな法律に対応するための改修費用(ヴァージョンアップ)は修繕
   費として経費になるけど、マイナンバー対応用に新たなソフトを購入し
   た場合は、今まで通り無形固定資産として資産計上だからね。」   

 私 「なるほど、我が社のマイナンバー対策費用は全額経費で大丈夫そうです
   ね。これで社員のナンバーが会社から漏れる心配もなくなって一安心で
   すよ。でも、公共機関側のミスでナンバーが漏れてしまった人はどうな
   るのですか?たしか番号は一生変わらないということでしたよね。」 

先輩「原則はそうだけど、実際に公共機関側のミスでナンバーが漏洩した場合
   は、新たな番号が交付されるらしいよ。しかも実際に運用前から大量の
   マイナンバーが漏洩しているわけだから、大勢の人に新たな番号が交付
   されることになるだろうね。だから会社側では毎年社員や扶養親族の番
   号を確認しないと、もしかすると変更されている可能性もあるわけだ 
   よ。」                             

 私 「面倒な話です。そういえば千葉県の男性が監視社会への批判を込めて、
   自分のマイナンバーをネット上で公開したことが話題になりましたよね。
   結局は『番号法違反』ということで削除されたようですが、あの人にも
   新たな番号が交付されるのですか?」               

先輩「それはないね。当然のことだけど、自分でマイナンバーを公開した人に
   まで救済措置はないよ。もともと番号法では『必要な場合以外に番号を
   提供してはいけない』ことになっているからね。」         

 私 「ということは、ナンバーを何かビジネスに利用することは無理ですか 
   ね?」                             

先輩「そうだね。実際に大阪の焼肉店で、マイナンバーの下4桁が『1129 
   (イイニク)』『4129(ヨイニク)』『2929(ニクニク)』な
   どの人には、焼肉を無料にするサービスを始めたけど、『必要な場合以
   外に番号を提供してはいけない』という番号法に抵触するという理由で、
   サービス開始から僅か2週間で国からダメ出しされたらしいよ。」  

 私 「えっ、皆が自分のナンバーに興味を持つ面白いサービスだと思いますけ
   ど。12桁の下4桁だけですよね。問題ない気もしますよね。」   

先輩「実は、この焼肉店ではサービスを始める前に国に問い合わせて、『下4
   桁なら問題ない』という返答を受けていたんだよ。しかも通知カードの
   下4桁だけが見える穴の開いたケースまで用意して、情報保護にも十分
   に配慮してからサービスを開始したわけさ。ところが始めてから『やっ
   ぱり駄目!』と反故にされたのだから気の毒としか言いようがないね。」

 中小企業の9割以上が制度に対応できておらず、通知カードの配達は遅れに遅れ、しかも国民の理解が十分に得られていない状況での見切り発車に、制度そのものが足元から揺らいでいるような危うい気がしています。

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その14 個人番号カードは申請するべきか否か

 本格的に運用が始まったマイナンバーですが、何かと問題が発生しているようです。例えば定期預金の利息にマル優や特別マル優などを利用している障害のある方に対して、定期預金の継続時にマイナンバーを届け出るように銀行から通知が来ています。しかし障害者手帳を所有する人が対象の制度のため、銀行へ出向くことが困難な方も多く、マル優等の利用をあきらめるケースも増加しています。これでは社会保障支援の一環であるマル優制度そのものが意味のないものになってしまいます。
 さて今月は、皆さんから質問の多かった通知カードに同封されていた個人番号カードを申請するべきか否かについて考えてみましょう。なお、本文中には私見が含まれていることを申し添えておきます。


 私 「先輩こんにちは。ちょっと伺いますが、先輩は通知カードに同封されてい
   た『個人番号カード』を申請しましたか?」             

先輩「いや、まだ暫く様子見の状況だよ。具体的にどんなメリットがあるかはっ
   きりしてから申請するつもりだけど。それがどうかしたのかい?」   

 私 「あ〜よかった。知り合いが『個人番号カードは申請しなければならない』
   と言っていたので心配になって.....。」            

先輩「なるほど。個人番号カードの申請は本来『任意』だけど、通知カードに同
   封されていた紙に『個人番号カードを申請しましょう!』なんて大きく書
   いてあったから、『申請しなければいけないの?』と心配になった人が大
   勢いたらしいね。実際はそんなに慌てる必要はないと思うよ。」    

 私 「もしカードを申請した場合は、どんなメリットが考えられますか?」  

先輩「それには国が個人番号カードを、何に利用できるようにするのかを知る必
   要があるよね。まず、1.身分証明書として利用する 2.健康保険証も
   一緒にする 3.ポータルサイト『まいなポータル』の認証に利用する 
   4.コンビニで住民票や印鑑証明が受け取れるようにする等は良く聞くメ
   リットだよね。」                         

 私 「その程度のメリットなら、たしかに慌てる必要はなさそうですね。身分証
   明なら通知カードと免許証で十分だし、健康保険証も今のカード型で問題
   ないし、まいなポータルはまだ来年からで、住民票や印鑑証明が必要なこ
   とって数年に1度くらいだし、だったら私も申請しなくても良いのかな?」

先輩「ところが、将来的には個人番号カードのICチップに1.銀行口座やメタボ
   検診の情報などが取り込まれる 2.運転免許証や公的な資格証明なども
   取り込まれる 3.クレジットカードやキャッシュカードの機能も統合す
   る 4.指紋などの生体情報も取り込む 5.病院の診察券や民間企業の
   発行するポイントカードまで統合する、といった大構想があるからね。し
   かも2020年の東京オリンピックの時には、外国人の観光客にもマイナンバ
   ーを振って、その個人番号カードで入場制限するという案も出ているらし
   いよ。」                             

 私 「もし、それが実現すれば個人番号カードがなければ何もできない世の中に
   なりますよ。やっぱりカードを申請したほうが良くないですか?」   

先輩「そう、それが実現するならね。たとえばマイナンバーは税や社会保障の手
   続きに利用するから、これから全国約400万企業の5,000万人にも及ぶ従業
   員の膨大なデータベースが作られることになるけど、万一これが漏洩した
   ら、その時点でマイナンバー制度は頓挫すると思うよ。年金情報の流出と
   いう前科があるだけに可能性はゼロとは言えないよ。国側は『セキュリテ
   ィは万全!』と説明しているけどデータを扱うのは所詮人間だからね。」

 私 「なるほど。将来的にはカードがあると便利だけど、不透明な部分も多い 
   し、どうなるかわからないから、先輩は暫く様子を見るということです 
   ね。」                              

先輩「そういうこと。流出で頓挫する可能性だけでなく、昨年暮れには弁護士ら
   約150人が、プライバシー権の侵害として、国を相手にマイナンバーの利
   用停止を求める訴訟を全国5地裁で一斉に起こしているから、この行方も
   気になるよね。ただし、そこまで気にせずに、国が言うように将来便利に
   なるなら無料の内にカードを申請しておこうという人も多いと思うよ。」

 私 「そういえば、通知カードの受け取りを拒否した人が大勢いたようですが、
   あの人たちはこれからどうなるのですか?」             

先輩「基本的にどうもならないよ。自分が番号を知らないだけで、本人の番号は
   既に決まっているから、書類に番号がなくても税務署や県、市町村では書
   類を受け取ってくれるはずだよ。でも、公共機関の誰かが、その人の番号
   を確認するという作業のために、無駄な税金を使うことになると思うけど。
   あとは、将来本人が銀行口座を開設する時とかに困るだけだよね。」  

 個人番号カードが便利に利用できるようになると、情報漏洩リスクは比例して大きくなっていきます。もし個人番号カードを申請しない場合は、必ず通知カードを大切に保管しておいて下さい。

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その15 何がどうなるマイナンバー

 ご承知の通り、将来的にマイナンバーは預貯金等にも紐付けされることから、個人情報が丸裸にされる不安を抱いている方も多いと思います。そこで今回はマイナンバーの運用が始まって、具体的に何がどうなるのかを考えてみます。なお、本稿は平成28年1月7日時点の内容です。


 私 「先輩こんにちは!気になっていたのですが、最近、夜のバイトの求人が多く
   ないですか?先日、無尽の2次会で行ったスナックでも、ママが『マイナン
   バーで副業がバレると困るから』といってアルバイトの女の子が大勢辞めて
   しまったと嘆いていましたが、その影響ですかね。でも、マイナンバー制度
   で本当に副業がバレるのですか?」                  

先輩「そういえば、ネット上でも『マイナンバーが導入されるとサラリーマンの副
   業が会社にバレる』とか、『副業で水商売しているOLが辞めると、キャバ嬢
   が激減して繁華街がゴーストタウン化する』とか話題になっていたよね。確
   かにナンバーを利用すれば副業を照合しやすくなるけど、マイナンバーの導
   入だけで副業を完全に把握できるわけではないと思うよ。」       

 私 「えっ、どうしてですか?色々な書類にその人のマイナンバーを記入して役所
   へ提出するから、個人情報は全て丸裸という気がしますが...。」   

先輩「よく考えてご覧よ。もし副業をしている事業所が、副業分の給与支払報告書
   や支払調書をしっかりと役所へ提出していたら、住所や氏名で照合されるか
   ら、もともとバレていたはずだよ。本来、給与支払報告書や支払調書の提出
   は事業者の義務だけど、はじめから違法を承知の上で提出していなかった事
   業所があったわけだね。マイナンバーを記入するのは給与支払報告書や支払
   調書だから、提出されなければ確認しようがないということさ。マイナンバ
   ー制度だけで解決できる問題ではないと思うよ。ただし今までより提出を厳
   しく取り締まる可能性はあるだろうね。」               

 私 「だったら、なぜ副業をしていた人達は慌てて辞めてしまったのですか?」 

先輩「そうだね、1番の理由は本業の会社で副業が禁止されていることだと思うよ。
   本来、副業は業務に支障がなければ問題のないことだけど、会社の就業規則
   で副業を禁止している場合が多いからね。今までは副業分を提出されると困
   る人と、辞められたら困るという事業所の思惑が一致して不提出という違法
   の手段で逃れてきたけど、そういう人達が『マイナンバーで副業が会社にバ
   レるのでは?』と心配になって大勢辞めたんだと思うよ。」       

 私 「なるほど。そういう意味ではマイナンバー効果ということですね。でも、も
   し将来マイナンバー制度で、バイト収入や副業が完全に把握できるようにな
   ったらどんなことが考えられますか?」                

先輩「あたり前のことだけど、例えば旦那が知らなかった妻の内緒のバイトや、大
   学生の子どもが年間いくらバイトで稼いだかもしっかり確認しないと、扶養
   親族からはずされる可能性があると思うよ。もし会社から扶養手当が支給さ
   れていれば返還させられることもあるだろうね。」           

 私 「他にもマイナンバー制度で何か問題が発生していますか?」       

先輩「本人の通知カードや個人番号カードを提示すると、マイナンバー以外にもカ
   ードに記載されている内容が相手に知られるよね。」          

 私 「えっ、記載されている内容って?良く覚えていませんけど、カードに何が書
   いてありましたか?」                        

先輩「おいおい、大事なことだよ。ナンバー以外に1.本名 2.住所 3.生年
   月日 4.性別が記載されていただろう。」              

 私 「そうだったかもしれません。でも、それは別に問題ないでしょう。」   

先輩「ところがそうでもないんだよ。例えば会社の広報の原稿を依頼した人に原稿
   料を支払う時に、支払調書を提出するからカードの提示をお願いしても、本
   人がペンネームで仕事をしているので本名は知らせたくないからと提示を拒
   否されたとか、クラブでホステス報酬を支払うのでカードの提示を求めても、
   性別を知らせたくない(?)とか色々問題があるわけさ。」       

 私 「たしかに外部の人とはそういうことがあるかもしれませんが、社員との間で
   は問題ないでしょう?」                       

先輩「それもわからないよ。例えば年齢を詐称して入社していれば生年月日でわか
   るし、実は結婚していたとか、離婚していたとかも、カードの姓と違うこと
   でわかるかもしれないよね。その時は『マイナンバーは漏洩の危険があるの
   で』という別の理由をつけて提示を拒否されるかもしれないよ。」    

 私 「そこまで考えると、これからの運用が心配になります。」        

 銀行がマイナンバーを導入するのは預金のみで、借入金は対象外です。もちろんサラ金はマイナンバーを利用できませんので、マイナンバーで情報が全て丸裸というわけでもなさそうです。

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その16 資産家とマイナンバー

 今年の相続税申告書から、亡くなった人と、その人の遺産を相続した人のマイナンバーの記載が義務付けられました。課税強化の色合いの濃い相続税ですが、預貯金へもナンバーが紐付けされる予定になっていることから、資産家の間ではマイナンバーで管理されない資産に注目が集まっています。今月は資産家とマイナンバーの関係を考えていきます。なお本稿は平成28年2月4日現在の内容です。


 私 「先輩こんにちは!早速ですが、友人が相続税の申告で困っているのでちょっ
   と教えてもらえますか?」                      

先輩「いいけど、相続税の問題は難しいよ。その友人は何を困っているんだい。」

 私 「いや、税金のことではありません。実は友人の父親が昨年暮れに急逝したの
   ですが、一人息子の友人宛に税務署から相続税の申告書が届いたんです。と
   ころが、届いた申告書には相続人の友人だけでなく、亡くなった父親のナン
   バーも記載が必要だったので、困って私に相談してきたというわけです。」

先輩「えっ、困るって?平成28年の相続税申告から、亡くなった人と、その人の遺
   産を相続した人のマイナンバーを記載することは決まっていたよね。」  

 私 「その通りですが、友人の父親は青森でずっと一人暮らしでしたから、友人は
   父親のマイナンバーはもちろん、通知カードがどこにあるかもわからないと
   いうんですよ。亡くなった本人から聞くわけにもいかないし...。」  

先輩「なるほど。本来は父親の生前に通知カードの保管場所を聞いておくべきだっ
   たね。『大切に保管するように』と広報されていたから、厳重にタンスの奥
   へしまい込む高齢者も大勢いただろうね。見つけ出すのは大変だと思うよ。」

 私 「そうですよね。でも実際どうしたら良いのですか?」          

先輩「う〜ん、残念ながら、その場合の対応はまだ明確になっていないんだよ。 
   『やむを得ない事情』があれば空欄でも大丈夫だと思うけど、所轄税務署へ
   事前に確認するしかないだろうね。ただし、亡くなった人の住民票の除票に
   ナンバーを記載してもらえる市町村もあるから、税務署の前に市町村へ確認
   した方が良いと思うよ。全ての市町村で除票にナンバーを記載してくれると
   相続人も助かるのにね。いずれにしても高齢者のマイナンバーには要注意だ
   よ。」                               

 私 「そういえば、預貯金にマイナンバーが紐付けされるのを嫌がって、早々に預
   貯金を解約して自宅で現金のまま保管する高齢者が増えているそうですね。」

先輩「そうらしいね。いわゆる『タンス預金』というやつだよ。正確な金額は把握
   されていないけど、30兆円から80兆円位あるといわれているね。でも政
   府は高齢者のタンス預金を快く思っていないわけさ。」         

 私 「あっ!そうか、相続税の課税逃れに利用されるからですね。」      

先輩「もちろんそれもあるけど、できれば政府としては、タンス預金を株式等の経
   済市場へ投入して欲しいと考えているんだよ。もし10兆円でも動いたら凄
   い経済効果が生まれるからね。だからNISAやジュニアNISAまで用意して株式
   市場を活性化しようとしているわけだよ。ところが、バブル崩壊を経験して
   いる高齢者にとって『投資は危険』なものだから、預貯金が駄目、投資も危
   険となると、結局のところタンス預金が増加することになるわけさ。」  

 私 「でもタンス預金って問題がないのですか?」              

先輩「まあ一長一短かな。要は現金だから、その人が亡くなっても預貯金のように
   口座が凍結される心配はなく、いつでも使えるよね。預貯金のように手数料
   もかからないし、ペイオフとかも心配しなくて良いというメリットはあるよ
   ね。ただし、利息は1円も付かないし、盗まれたり災害にあうリスクもある
   よね。それに、もし相続税を免れるためにタンス預金を考えるなら税務署は
   それ程甘くないと思っておくべきだよ。見つかったら莫大な追徴税だから 
   ね。」                               

 私 「それにしても資産家は、預貯金にマイナンバーが紐付けされることに必要以
   上に抵抗がある気がしますが、相続税以外にも何か理由があるのですか?」

先輩「そうだね。一部のマスコミなどでは新たに『金融資産税』が課税されるとか
   噂さてれいるよ。」                         

 私 「『金融資産税』ですか?初めて耳にします。」             

先輩「要するに、マイナンバーで炙り出した預貯金に課税しようというものだよ。
   土地や建物には固定資産税が課税されているし、もし車を買えば自動車税な
   どが課税されるわけだから、預貯金にだって課税するのが当然という考えだ
   ね。かなり乱暴な気もするけど、マイナンバーの紐付けで可能になることは
   確かだよ。他にも一定以上の預貯金のある人の社会保障をカットする、例え
   ば年金を減らす、医療費の自己負担を増やすとか色々と噂されているよね。」
 
 私 「なるほど、そりゃあ資産家が嫌がるわけだ。」             

 国がマイナンバーを利用して、国民の財産を徹底的に管理するなら、死亡届を役所に提出したら、生命保険金が口座に振り込まれたり、税務署が相続税を計算して相続人に納付書が送られてくる位の大胆な改革が必要です。

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最終回 マイナンバー制度俯瞰 メリット・デメリット

 政府は昨年中に全国民に通知カードを届けて、今年から個人番号カードの交付を開始する計画でしたが、現実には昨年末で約1割の国民に通知カードが届いておらず、今年1月末時点の個人番号カードの申請率もわずか6%と計画を大きく下回っています。昨年大騒ぎしたマイナンバー制度ですが、今年に入ってマスコミが沈静化しているのを幸いに、導入作業は遅れながらも粛々と進められているようです。最終回の今回はマイナンバー制度を俯瞰して、そのメリットやデメリットを復習してみたいと思います。なお、本稿は平成28年3月16日時点の内容です。


 私 「先輩こんにちは。昨年大騒ぎしたマイナンバーですが、今年に入ったらあ
   まり話題にならなくなりましたね。」                

先輩「そうだね。日本人特有の喉元すぎれば何とやら・・かな?本当は新宿区で
   は発送した通知カードの約4分の1が本人に届かずに返送されてきたと 
   か、実務上は大きな問題があちらこちらで発生していたはずだけどね。」

 私 「でも、私の通知カードも昨年末に会社へコピーを提出した後は、ずっと家
   の金庫に眠ったままですよ。あまり必要ないような気もしますけど。」 

先輩「今のところはそうだろうね。本格的にナンバーが必要になるのは、来年か
   ら始まるマイナポータル(ネット上のポータルサイト)が稼働してからだ
   と思うよ。行政手続がネットでできるようになったり、その人の年収や預
   金残高、病歴などのプライベート情報が満載される予定だからね。」  

 私 「もし行政手続きがネットでできるようになると離婚が増加しませんか?」

先輩「えっ、何それ、どういうこと。」                  

 私 「だってパソコンやスマホで簡単に離婚届が提出できるわけですよね。我が
   家でも会社から帰宅後に妻と大喧嘩して、売り言葉に買い言葉で『よし離
   婚だ!』なんてこともあるわけですよ。でも一晩寝るとお互い冷静になっ
   ていたり、離婚届けにサインして役所に届けるのも面倒だし、結局ウヤム
   ヤなまま元の関係に戻るわけです。今までに何度かありましたよ。」  

先輩「まあ、それはどこの夫婦も同じだと思うけど。」           

 私 「でも、パソコンやスマホで簡単に離婚届が出せるなら、些細な夫婦喧嘩か
   らお互い感情的になって、その場で合意して届出。冷静になった時には 
   『離婚成立』という恐ろしい事態も起こりかねませんよ。」      

先輩「そういう可能性はあるだろうね。でも逆に、合コンの会場から気のあった
   男女が婚姻届を提出。『結婚成立』ということだってあると思うよ。」 

 私 「なんでも効率化すれば良いという問題ではない気もしますけど・・・。」

先輩「そうだね。でもマイナンバーの最大の目的は『効率化』で、ナンバーを使
   えば皆が便利になると国をあげて喧伝してるから仕方がないよ。まあ、そ
   の裏側には『富裕層の課税を強化する』という別の狙いもあるけどね。」

 私 「先月勉強した個人の預貯金とナンバーの紐付けですね。でも日本は1億総
   中流社会だから、富裕層の課税強化って意味がないんじゃないですか?」

先輩「おっ、『1億総中流社会』って懐かしい響きだね。以前は確かにそうだっ
   たかもしれないけど、今は明らかに格差社会だよ。少しわかりやすく説明
   しよう。例えば日本人の個人金融資産は総額約1,500兆円と言われている 
   よね。これを日本の人口約1億2千万人で割るといくらになるかな?」 

 私 「え〜と、1,500兆円÷1億2千万人だから、1,250万円ですね。」    

先輩「で、君の家族は何人だったかな?」                 

 私 「えっ、私と妻、子供3人の5人家族ですけど、それが何か?」     

先輩「それなら1,250万円×5人=6,250万円位の金融資産があるというのが平均
   だよね。もちろん土地や建物などの不動産は別にしての話だよ。」   

 私 「6,250万円の金融資産って・・そんなお金あるわけないでしょう!私のま
   わりにも、それだけのお金を持っている人はあまりいませんよ。」   

先輩「そうだよね。だから個人金融資産の大半は一部の富裕層が握っていること
   がわかるだろう?これが格差社会の実態だよ。そして富裕層は、色々な投
   資をしていたり、複数の会社から報酬を貰っていたり、様々な不動産収入
   があったりと、資産や収入が多岐にわたるから完全に把握できずに、多額
   の課税漏れが発生していた可能性があったわけだよ。そこでマイナンバー
   の登場になったということだね。」                 

 私 「つまり、マイナンバーで最もダメージを受けるのは、資産や所得を隠して
   いた一部の富裕層ということですか。そうであれば真面目な納税者にとっ
   てマイナンバー制度は決して歓迎できないものではなさそうですね。」 

 マイナンバー制度についてシリーズでお伝えしてきましたが、制度の本質を理解することで、自分の財産を守り、心豊かに暮らしていく方法を考える良い機会になったのではないでしょうか。

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