MEDICAL INFORMATION 第2号
未収金はいつまで請求できるのか
平成14年10月から高齢者の医療費負担が定率制に改正されたことに伴い、医療事務は益々複雑になってきました。これまでも患者負担が一部未収になってしまうという問題はありましたが、高齢者負担の定率制や外国人労働者の増加、さらに来年4月の政管健保本人の3割負担などによって、その危険度はさらに高くなっています。今回は重大な問題となりつつある『未収金』とその『時効』についてご報告します。
時効とは
時効と聞くと以前「3億円事件」や「グリコ森永事件」の犯人が時効まで逃げ切ったことを思い出しますが、この場合の時効は「逮捕して裁判に訴える効力」が時の経過とともになくなったことを意味します。このように時の経過により、その事実に特別な法的効果を認めるものを「時効」と言います。お金や物の貸し借り等にもこの時効があり「消滅時効」と「取得時効」の2つがあります。恐いことですが、例えばお金を貸してそのまま一定期間が過ぎてしまうと、あなたの権利そのものが消滅してしまいます。これを「消滅時効」と言います。また、例えば他人が自分の土地だと思い込んで、あなたの土地の上に住宅を建てて住みはじめた場合、そのまま一定期間が過ぎるとあなたの土地が他人のものになってしまいます。これを「取得時効」と言います。
医療費の消滅時効
患者から窓口で受け取る一部負担金や入院時の差額ベット料などが、患者の都合などでやむを得ず未収になってしまう場合があります。そのような医療行為に関する未収金にも時効があります。民法では診療等を行なった日の翌日から3年で時効が成立すると規定していますので、これを過ぎてから回収しようとしても「そんな前のものは払えない。」と言われてしまえば、理不尽なことですが本当に回収は不可能になってしまいます。
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未収金を発生させない工夫
最悪の場合、未収金は医院の負担になりかねませんので、これを発生させない努力と工夫が必要です。これは一般の会社でも言えることで、未収金を発生させない為にまず行うことは、当然のことですが素早く請求・集金をすることです。時間が経過するとそれだけ回収が困難になってしまいます。窓口一部負担金の未収は、うっかり財布を忘れた、手持ち現金が足りないなどの患者側の原因で発生することが多いようです。この場合は、後で届けてもらったり次回の来院時に精算してもらうことになると思われます。しかし、その場合も住所・電話番号・勤務先などの確認を行い、確実に連絡が取れるようにしておきましょう。
また、予約診療を行っている場合で、次回の治療費が多額になることが予想される時は、あらかじめおおよその金額を知らせておくようにすれば未収金予防になります。最近では未収金予防と事務の効率化などを目的として、クレジットカードでの支払ができるようにしている医院もあるようです。
未収金が発生したら
やむを得ず発生してしまった未収金への対応は、患者がその未収金を故意に払わないのかどうかで異なってきます。単にうっかり忘れている患者に対して、いきなり内容証明郵便を送ったのでは逆効果です。当初は電話で連絡を取り、順にハガキでの催促、訪問、身元引受人への連絡などを検討することになると思われます。連絡を取る過程で故意に払わないことが判明しても、診療に不満があるのか、単に患者の金銭的な問題なのかを把握して対応する必要があります。また、どこまで追跡するかについては、その未収入金の金額とかかるコストとの兼ね合いになりますが、回収に向けた努力は不可欠です。そしてその努力の過程を必ず記録に残しておくことが大切です。|
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時効への対応
回収に向けた努力をしていても、思うように回収ができずに時が経過してしまうと、いよいよ時効という問題になります。「3年経ったから払わない。」と言われないためには時効を止めなければなりません。これを「時効の中断」といいます。有効に時効が中断されれば、その時点から新たに3年の時効が進行することになりますので、回収に向けた新たな策を練ることができます。ただし電話やハガキで催促しただけでは時効の中断になりませんので、次のような措置が必要となります。
主な有効措置
患者が「いつか払います。」と言う限り、いつまでも請求することは可能です。しかし突然時効を主張される可能性もありますので、必ず時効の中断の手続きを行って下さい。@患者にその医療費について確認した文書を出してもらう。
A患者にその医療費の一部を支払ってもらい、残高を認めてもらう。
B訴訟を起して、その医療費を確認させる。 など
未収金の処理
長期に渡って回収の努力を試みて、なおかつ回収の可能性が無い場合はどうしたらよいでしょうか。悔しいことですが、税法上の「貸倒れ」の手続きを検討することになります。ただし貸倒れが認められるかどうかは、個々の未収金ごとにその金額や回収できない理由等を吟味する必要があります。そこで回収に向けた努力の記録が重要な意味を持ってきます。安易な貸倒れ処理は税務当局に認められない可能性がありますのでご注意ください。
回収不能の未収金が発生したり、処理に不明な点がありましたら、監査担当者までご相談ください。
平成14年11月吉日 居纐ビジネスコンサルタンツ医療委員会