法人や個人が適正な確定申告をしない場合に、重加算税、無申告加算税等が課されます。平成13年4月に施行される情報公開法を前に、国税庁から「仮装・隠ぺい」の定義をはじめ、重加算税の認定基準などを明らかにした事務運営指針が公表されました。今月号では罰則規定の中で一番重い、重加算税の認定基準を中心に説明していきます。
1.重加算税とは
法人や個人が国税の課税標準または税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を仮装・隠ぺいした申告書を提出した時などに重加算税がかかります。ここでいう「仮装」とは、「故意に事実を曲げ、その行為があたかも事実であるかのように装うこと」をいいます。また「隠ぺい」とは、「事実を隠し又は故意に帳簿などから取引を除外すること」をいいます。
この重加算税は、悪質な納税違反者に重い経済的負担を負わせ、納税義務の適正な実現を目的としています。そのため重加算税の税率は、例えば法人の場合、通常の法人税とは別に、税務調査等によって増加する所得のうち、仮装・隠ぺいと認められる部分に対して35%(過少申告の場合)または40%(無申告の場合)と重い税率を設けています。
2.重加算税の具体例
重加算税は不正行為が発覚した場合に、税務当局から法人等に対して課税されます。今回公表された重加算税と認定される仮装・隠ぺいの具体例の一部は下記の通りです。
┌─仮装・隠ぺいの具体例の一部────────────────┐ │@いわゆる二重帳簿を作成する │ │A帳簿、契約書、請求書、領収書、貸借対照表、損益計算書などの帳簿│ │ 書類を捨てたり、隠したりする │ │B帳簿書類の改ざんや虚偽記載、取引の相手方と示し合わせて虚偽│ │ または架空の契約書等を作成するなど不正な経理を行なう │ │C帳簿書類の作成または記載をせず、売上その他の収入を計上しな│ │ かったり、棚卸資産を計上しないなど │ └──────────────────────────────┘
3.仮装・隠ぺいとされない具体例
今回の事務運営指針では、仮装・隠ぺいの具体例とともに仮装・隠ぺいとされない具体例が公表されました。
┌─仮装・隠ぺいとされない具体例の一部────────────┐ │@売上等の収入の計上を繰延べている場合に、その収入が翌事業年│ │ 度の収益に計上されていることが確認されたとき(売上等の計上│ │ 時期はインフォメーション今月号『社長になろうと思ったとき』│ │ をご参照下さい。) │ │A経費の繰上げ計上をしている場合に、その経費が翌事業年度に支│ │ 出されていることが確認されたときなど当期と翌事業年度の損益│ │ がプラスマイナスゼロになる場合 │ │B店ざらしになっているなどの棚卸資産について、評価換えにより│ │ 過小評価をしている場合 │ │C交際費など損金への算入限度額の規定がある支出項目について、│ │ 課税逃れをしようというのではなく、単に「販売奨励金」等の違う│ │ 費用に計上している場合など単純な計上ミスをしている場合 │ └──────────────────────────────┘ *但し仮装・隠ぺいと認められないためには、帳簿書類の改ざん等不正 な行為が行なわれていないことが前提となります。また上記の具体例 は重加算税の対象にはなりませんが、過少申告加算税等の対象になり ますので注意下さい。
4.青色申告の承認取り消し
法人が仮装・隠ぺいを行ない、不正所得が最終的な申告所得額の50%を超える場合など一定以上の不正による所得隠しを行なった場合には、青色申告の承認が取消されます。例えば当初、仮装・隠ぺいを行い500万円の所得として不正に確定申告をしていた法人が、税務調査を受け2,000万円の所得とされた場合、その差額の1,500万円が最終的な申告所得額(2,000万円)の50%以上である場合に青色申告の承認は取消されます。(不正部分の所得金額が500万円未満の場合には、この規定は適用されません。)また、2事業年度連続して確定申告書を提出期限までに提出しない場合にも青色申告の承認が取消されます。青色申告の承認が取消されると欠損金の繰越控除など青色申告の特典が受けられなくなります。
今回重加算税以外にも、無申告加算税等の具体的基準が明らかにされました。仮装・隠ぺいが発覚すると、税額が増加するだけでなく、様々の不利益な取扱いを受けることにもなりかねません。また二重帳簿などで経理をごまかしていると、経営の真の姿を見失ってしまいます。真面目な経営こそ、不況を乗り切る経営者の一番の資質ではないでしょうか。
前回は、未払金・未払費用等の違いを皆様にも再確認していただけたかと思います。今回も一緒に勉強していきましょう。
友達「こんにちは、先輩。今日は何の勉強ですか?」 先輩「今日は最も重要な売上について勉強するよ。早速、巡回監査報告書 の内容を見てみよう。」 ┌───────────────────────────────┐ │売上計上基準の妥当性及び、その継続性を確かめたか。 │ └───────────────────────────────┘ 先輩「原則として企業会計では継続企業と期間計算が前提となっているか ら、損益は一会計期間において実現した収益から費用を差し引いて 算出するだろ。だから、売上に関して、さまざまな販売収益をどの 時点において計上するのかが重要なポイントとなってくるんだ。君 の会社はどの時点で売上に計上しているんだい?」 友達「もちろん、商品を販売したときですよ。」 先輩「じゃあ、在庫がなくて商品のお金だけもらった時は?」 友達「えっ、どうしているんだろ...」 先輩「先月勉強したじゃないか。前受金で処理しているんじゃないのか い?じゃあ、代表的な売上の計上基準について勉強しよう。」 ┌─売上計上基準────────────────────────┐ │法人税法では「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って│ │計算されるもの」と明示されています。現在の会計慣行では、売上の│ │計上基準として「実現主義」を採用しています。 │ └───────────────────────────────┘ 友達「実現主義?聞いた事ないなぁ。」 先輩「実現主義の『実現』とは役務の提供や商品等の販売が、現金・受取 手形・売掛金等の貨幣性資産に形を変えることを言うんだ。」 友達「そうすると我社の場合は商品を販売したときに貨幣性資産に変わり ますから、販売時点で売上に計上すれば良いですね。」 先輩「そうだね。それが、実現主義であり、具体的には販売基準と言われ ているんだよ。一般的には君の会社のように商品をお客様に引渡し た日で売上計上する販売基準が採用されているね。」 友達「引渡しの日の違いによっては他にも基準があるのですね?」 先輩「もちろん、業種や販売形態によって商品等の引渡しの日も違うわけ だからね。引渡しの日として具体的には次の基準があるんだよ。」 ┌─他の基準は─────────────────────────┐ │@出荷基準 │ │ 商品等の棚卸資産を出荷した日に引渡しがあったとする方法。出荷│ │ の具体的な時点として、店頭又は倉庫等から出荷したとき・相手先│ │ の受入場所へ搬入したとき等が考えられます。 │ │A検収基準 │ │ 相手先が検収した日に引渡しがあったとする方法。 │ │B使用基準 │ │ 相手先が使用収益できた日に引渡しがあったとする方法。 │ │C検針日基準 │ │ 検針により販売数量を確認した日に引渡しがあったとする方法。 │ └───────────────────────────────┘ 友達「こんなにあるのですか、来年はどの基準を採用しようかな。」 先輩「それはダメだよ。税法では、法人が引渡しの日として合理的である と認められる日のうち、継続して上記の基準を収益計上として適用 していれば、それが認められる事になっているんだ。」 友達「そうなのですね。では、会社の業務内容等に大きな変化がなければ 売上の計上基準は変わる事はないですね。」 先輩「そうだね。税務調査においてもその会社の売上計上基準が、妥当で 明確にされており継続的に適用されているかが確認されるんだ。」 友達「なるほど。当社の販売基準が徹底されているか再確認します。」
企業会計では処理の原則及び手続きを毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならないとなっています。貴社で採用している売上計上基準を再確認してみてください。
今月号からは、新経営事項審査(以下:新経審)の目玉であるY評点の改正について検証してみます。
経審のY評点は「収益性」「流動性」「安定性」「健全性」の観点から企業の経営分析を行い、その企業の財務内容を点数で評価することになっています。それまでの経審では、完成工事高至上主義で評価が行われてきました。しかしバルブ崩壊後、高いY評点の大手ゼネコンが相次いで倒産したため、それまでのY評点の評価方法の問題点が浮き彫りとなり、新経審において大きく改正されることになりました。
不良債権を抱え、あるいは有利子負債が多くて首が回らない大手建設業者よりも、財務内容の良い建設業者の点数を高くし、適正な評価が行われるように、以下の通りY評点の審査基準の改正が行われました。
| 改 正 前 | 改 正 後 | 寄与度 | ||||
|
収 |
X1 | 売上高経常利益率 |
収 |
X1 | 売上高営業利益率 | 14.2% |
| X2 | 総資本経常利益率 | X2 | 総資本経常利益率 | 8.1% | ||
| X3 | 損益分岐点比率 | X3 | キャッシュフロー対売上高比率 | 7.1% | ||
|
流 |
X4 | 流動比率 |
流 |
X4 | 必要運転資金月商倍率 | 2.6% |
| X5 | 当座比率 | X5 | 立替工事高比率 | 10.2% | ||
| X6 | 運転資本保有月数 | X6 | 受取勘定月商倍率 | 2.8% | ||
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生 |
X7 | 一人当り完成工事高対数 |
安 |
X7 | 自己資本比率 | 8.9% |
| X8 | 一人当り付加価値対数 | X8 | 有利子負債月商倍率 | 17.0% | ||
| X9 | 一人当り総資本対数 | X9 | 純支払利息比率 | 11.3% | ||
|
健 |
X10 | 固定比率 |
健 |
X10 | 自己資本対固定資産比率 | 3.5% |
| X11 | 自己資本比率 | X11 | 長期固定適合比率 | 9.1% | ||
| X12 | 固定負債比率 | X12 | 付加価値対固定資産比率 | 5.2% | ||
改正点1:生産性分析が消えた
Y評点改正の中で最も注目したいのは、「生産性」の分析が審査基準から除かれた点です。倒産した企業のY評点が、他の企業の平均点よりも高かった原因の一つに、この「生産性」の点数がありました。
「生産性」の分析は、一般的な経営分析においては創造性分析とも言われ、企業の構成員一人一人の創造的な働きを評価する分析方法です。しかし、倒産直前の企業がリストラによる人員削減を行った場合は、かえって一人当りの生産性が上がり、生産性の点数が高くなるという逆転現象が起こっていました。そこで、この点を改善するために一人当りの完成工事高対数などを分析していた「生産性」は、審査基準から消えることになったのです。
改正点2:収益性X1評点の変更
改正前は雑収入など営業外の損益も含めた経常利益が、完成工事高の何%あるかで「収益性分析」のX1評点(売上高経常利益率)を求めていました。しかし改正後の「収益性分析」は、本業から生じた利益を表す営業利益が完成工事高の何%あるかで、X1評点(売上高営業利益率)を求めるようになりました。これにより、解約返戻金のある保険を解約し雑収入に計上することで、経常利益を増やすといった一時的な収益改善は、通用しなくなりました。また、この「収益性分析」X1の新Y評点への寄与度は改正前より高くなっており、営業活動の改善がY評点のアップに大きく影響してきます。
改正点3:安定性の導入
一般的な経営分析では「経営の安全性は財務資本の面と人的資本の2面性を捉えることにより分析できる」とし、安全性分析を自己資本比率や従業員定着率で行っています。新Y評点では、この財務資本面を「安定性」として新たに評価するようになりました。特に、新Y評点の寄与度が最も高い「有利子負債月商倍率」は、不良債権を抱え有利子負債が多くて資金繰りが逼迫しているような建設業者のY評点を低くする役目を担っています。
以上の改正点以外にも、「流動性」の審査基準改正により小手先の財務諸表の操作だけでは点数が上がらないようになりました。
来月号からは、功刀智明建設鰍モデルに、新Y評点では何処を改善すれば良いのかを検証して行きましょう。
いよいよ今年も年末調整の時期がやってきました。今月・来月と2回に渡り年末調整について説明していきます。今月号では、昨年との変更点とともに年末調整事務を行うために準備しておく書類について説明していきます。
昨年との変更点
介護保険料は社会保険料控除の対象
今年4月から介護保険法の施行に伴い、原則として40歳以上の方について介護保険料が徴収されています。(65歳以上の方は10月より徴収)この介護保険料は社会保険料控除の対象となります。
年少扶養親族に対する割増控除の廃止
昨年の改正では、16歳未満の子供を年少扶養親族として、通常の扶養控除額38万円に10万円を上乗せし48万円の控除ができましたが、今年の改正で児童手当の拡充等が図られたことにより廃止され、控除額は38万円となります。ただし、次の場合には年少扶養親族として48万円が控除できます。
@改正法の施行日前(平成12年3月31日以前)に年少扶養親族に該 当する方が亡くなった場合 A年少扶養親族に該当する扶養親族のいる給与所得者が、死亡や海外転 勤により非居住者になったことなどの理由で、改正法の施行日前に支 払う最後の給与で年末調整を行う場合 ┌────────────┬─────────┬─────────┐ │ │ 改正前 │ 改正後 │ ├────────────┼─────────┼─────────┤ │一般の扶養親族 │ 38万円 │ │ ├────────────┼─────────┤ 38万円 │ │年少扶養親族(16歳未満)│ 48万円 │ │ └────────────┴─────────┴─────────┘
定率減税処理の計算欄が新設
今年も昨年に引き続き20%の定率減税(最高25万円)が実施されます。昨年の給与所得に対する所得税源泉徴収簿(以下源泉徴収簿といいます。)には定率減税の計算欄が無く手書き等で欄を作り定率減税処理を行ったことと思います。今年の源泉徴収簿には定率減税の計算欄が設けられていますので減税処理が行いやすくなりました。
年末調整事務を行うために準備しておく書類
□給与所得に対する所得税源泉徴収簿
月々の給与計算の際に使用しているものですので、既に記入されていると思います。年末調整を行うにあたり総支給金額、社会保険料の控除額等の合計を計算し年末調整欄へ転記しておきます。
□給与所得者の扶養控除等申告書
この申告書は最初の月の給与を支払う前に既に各人から提出してもらっていると思います。各人の扶養に異動がないかをもう一度確認してもらいましょう。
□給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
税務署等から申告用紙の調達ができましたら早めに各人へ配付しておき、生命・損害保険料控除など控除証明書の添付が必要なものについては、添付書類を確認し早めに提出してもらいましょう。また、20歳以上の大学生等(生計を一にする親族)の国民年金を親が本人に代わって負担する場合、その負担した国民年金も社会保険料控除の対象となりますので、申告漏れのないように記入してもらいましょう。
□給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
給与所得者が住宅借入金等特別控除を受ける場合、初年度は確定申告をして控除を受けますが、2年目以降は年末調整で控除を受けることができます。住宅借入金等特別控除を受ける方がいる場合には、既に所轄税務署から郵送されている住宅借入金等特別控除申告書と、添付書類である金融機関等が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を提出してもらいましょう。
年末は何かと忙しいものです。昨年との変更点を確認していただくとともに早めに必要書類の準備を行いスムーズに年末調整が行えるよう心掛けて下さい。