わが国の建設業界は、年間建設投資額約72兆円、業界従事者数約680万人(全産業の約1割)という大きな規模をもっており、各地域における経済・雇用の下支えとして大変重要な役割を担っています。しかし、この建設業界にもいよいよ淘汰の大波が押し寄せており、今まさに生き残りをかけた「建設業ビッグバン」が始まろうとしています。特に、建設王国といわれるこの山梨県において、建設業に携わる中小企業社は、今後どの方向へ進めば良いのかをシリーズで一緒に考えていきましょう。
〜建設産業政策大綱の策定〜
許可建設業者は現在全国で58万6千社あるといわれています。しかし建設省では「3年後には公共工事の発注量を現在の30%削減し、5年後には約半分にする」としています。しかも全ての業者に対して平等に発注量を減少させるわけではなく、発注量の減少分、業者数そのものを減少させることを考えているのです。一説には全体で20万社まで減らすという目論見があるともいわれています。現に平成7年に発表した「建設産業政策大綱」では、下記の3つの基本目標を掲げ、従来の横並びの「共生社会」から、技術と経営に優れた企業が生き残る「競争社会」へ変換するべきとしています。更に、建設市場の国際化という新しい競争の時代を迎え、より一層の自助努力を強調したものとなっています。
@国民に対する目標・・エンドユーザーに良いものをトータルコストで安く(建設投資予算の削減)
A経営体に対する目標・・技術と経営に優れた企業が自由に伸びることのできる競争環境作り(競争社会への転換)
B建設業で働く人に対する目標・・技術と技能に優れた人材が生涯を託せる産業作り(無許可業者の排除)
この「建設産業政策大綱」をうけて、「指名競争入札制度の改善」と、公共工事入札参加の前提である「経営事項審査の評価方法」が変更されています。今月は「指名競争入札制度の改善」について考えてみましょう。
〜指名競争入札制度の改善〜
公共工事の入札・契約は、競争入札により受注先の建設業者が決められます。この競争入札制度の方式には、@一般競争入札方式 A制限付一般競争入札方式 B指名競争入札方式 C随意契約 の4種類があり、契約自由の観点から法律上では、許可を持った建設業者であれば誰でも参加出来る@一般競争入札方式が原則とされています。しかし、参加者が多数になると入札事務が煩雑になり、また不良不適格業者の参加も予想されるため、B指名競争入札方式が、明治以来100年間一般的に利用されています。
この指名競争入札方式は、入札事務の合理化だけでなく、地域の実情を反映させ、質の高い工事を行える信頼のある建設業者を発注者(国や県等)が指名し、入札を行わせることが目的でした。そのため正しく使われていれば効率的な入札制度のはずが、指名手続きの不透明性から、金丸事件をはじめとするゼネコン汚職が相次ぎ、指名に伴う不祥事の発生を防ぐために、平成5年以降次のような改善が行われました。
@指名基準及びその運用基準を定めて公表する
A指名業者名や入札の経緯及び入札結果を公表する等
手続きの客観性・透明性・競争性の確保に努めた改善策になっています。
1億円以上2億円未満の工事について実施している「工事希望型指名競争方式」(下図参照)の場合も、技術資料の提出という手順を経た上で指名を行い、指名されなかった場合でも業者の要請があればその理由を説明することとしており、指名基準の透明性を確保しています。また、指名基準であるランク(Aランク、Bランク..等)を判断する「経営事項審査」が、以前は完成工事高等の規模を重視した評価になっていたため、財務体質の悪化したゼネコンの相次ぐ倒産をまねいた事を教訓に、規模から財務内容を重視した制度となるよう改善されました。来月号は、この「経営事項審査」について考えてみます。
工事希望型 ┌─────────┐ │希望工種の事前受付│ 年度当初に一括受付け └─────────┘ ↓ ┌─────────┐ │ 技 術 資 料 提 出│ ランク │ 対 象 業 者 選 択│ 本社、支店の所在 └─────────┘ 工事規模等 ↓ ┌─────────┐ │技術資料提出依頼 │ └─────────┘ ↓ ┌─────────┐ │ 技術資料受付け │ 受注意欲の確認 └─────────┘ 施工実績 ↓ 配置予定技術者 ┌─────────┐ │ 指名(10社程度)│ 技術的適性 └─────────┘ 手持工事量 ↓ 指名回数 ↓ 工事成績 ↓ 欠格要件 等 ┌─────────┐ │ 入 札 │ └─────────┘
前回は固定資産の取得価額について勉強してきました。今月は資本的支出の勉強です。
友達「こんにちは、先輩。今日は資本的支出の勉強ですね。」 先輩「そうだね。じゃあ、早速巡回監査報告書の内容を見てみよう。」 ┌───────────────────────────────┐ │仕入、消耗品費、修繕費等のうちで、資本的支出とすべきものの有無│ │を確かめ、適正な処理を指導したか。 │ └───────────────────────────────┘ 先輩「固定資産に対する支出で、その支出が税務上損金経理できるのか、 あるいは資産計上なのか判断に困る事はないかな?」 友達「ありますよ。この間も従業員の要望で倉庫に避難階段を取り付けた のですが、この費用は修繕費として処理させました。まさか、資本 的支出ですか?」 先輩「まさに資本的支出だよ。」 友達「そうなのですか。そもそも資本的支出とは何ですか?」 先輩「じゃあ、説明するよ。」 ┌─資本的支出とは───────────────────────┐ │固定資産の使用可能期間の延長または価値の増加をもたらす等の積極│ │的な支出であり、固定資産の取得価額に加算します。 │ │<具体例> │ │@建物の避難階段の取付等、物理的に付加した部分に係わる金額。 │ │A用途変更の為の模様替え等、改造または改装に直接要した金額。 │ │B機械の部分品を品質または性能の高いものへ取り替えた費用等、そ│ │ の取替に要した費用のうち、通常の取替に要すると認められる費用│ │ の額を超える部分の金額。 │ └───────────────────────────────┘ 先輩「これが、資本的支出の代表的なものだよ。でも、実際の判定は理論 的にはともかく実務上は非常に難しいんだ。そこで、税法上は形式 基準を定め、その基準による判定を認めているんだよ。その形式基 準の流れを簡単に図にするよ。」 形式基準 ┌─┐ ┌───────────┐ ┌─┐ │ │ │修理・改良等の支出金額│ │ │ │ │ └───────────┘ │ │ │ │ ↓ │ │ │ │ ┌───────┐ Yes │ │ │資│ │20万円未満か│→→→→→→→→→→→→→│ │ │ │ └───────┘ │ │ │ │ ↓No │ │ │ │ ┌────────────┐ Yes │ │ │ │ │周期がおおむね3年以内か│→→→→→→→→│修│ │ │ └────────────┘ │ │ │本│ ↓No │ │ │ │ ┌────────────┐ │ │ │ │Yes│明らかに価値を高めるもの│ │ │ │ │←←←│又は耐久性を増すものか │ │ │ │ │ └────────────┘ │ │ │的│ ↓No │繕│ │ │ ┌──────────┐ │ │ │ │ │き損したものを原状に│ Yes │ │ │ │ │回復するためのものか│→→→→→→→→→→│ │ │ │ └──────────┘ │ │ │支│ ↓No │ │ │ │ ┌───────┐ Yes │ │ │ │ │60万円未満か│→→→→→→→→→→→→→│費│ │ │ └───────┘ │ │ │ │ ↓No │ │ │ │ ┌──────────────┐Yes │ │ │出│ │前期末取得価額の10%以下か│→→→→→→│ │ │ │ └──────────────┘ │ │ │ │ ↓No │ │ │ │ ┌─────────────────┐ │ │ │ │←←←│割合区分による方法を採用しているか│→→→│ │ └─┘ └─────────────────┘ └─┘ 友達「なるほど。実務上の判断は難しいですね。ところで、割合区分によ る方法は資本的支出と修繕費の両方に該当するのですか?」 先輩「そうなんだ。継続適用をしている事が要件なんだけど支出した金額 の30%と前期末取得価額の10%のいずれか少ない金額は修繕費 となるんだ。この金額を支出金額からマイナスした金額が資本的支 出になるんだよ。」 友達「なるほど。では、割合区分を採用していない場合は上の図に当ては まらないのですが、どうすれば良いですか?」 先輩「そうなったら、実質により判定するしかないね。だから、修繕費な のか資本的支出なのかの判定は、会社側と税務署の間にも見解の相 違がよくあるんだよ。」
資本的支出と修繕費の判断は非常に難しい事が理解していただけたかと思います。20万円以上の修繕を行った場合は常に処理に注意してください。また、具体的な事例については監査担当者にお問い合わせください。
担保力の乏しい中小企業にとって、資金調達は存続に関わる重大な問題です。そんな中、最近にわかに注目されているのが「少人数私募債」です。原則として社債は担保がないと発行できませんが、「少人数私募債」は発行会社の将来性に魅力があると応募予定者が納得すれば担保は必要ありません。今回はこの「少人数私募債」に注目してみたいと思います。
少人数私募債とは?
少人数私募債は、従業員や取引先、知人などを募集対象にした縁故私募債で、取締役会の決議だけで社債の発行ができる資金調達方法です。最近できたものではありませんが、商法に明確な規定がなかったため、あまり使われませんでした。しかし、昨今の「貸し渋り救済策」として、一躍脚光を浴びるようになってきたのです。では、具体的に発行条件を見ていきたいと思います。以下の点をクリアすれば少人数私募債の発行は可能です。
@まず、株式会社であること。有限会社は、社債募集ができません。
A債権購入者は50人未満の縁故者であり、公募は行わないこと。
50人以上になると通常の社債に該当し、社債を管理する会社(証券会社など)を置かなくてはなりませんので注意が必要です。
B社債募集総額は5億円未満とする。
未公開会社で債権や株式を募集する場合は、売り出し価格が5億円未満であれば大蔵省への届け出の必要はありません。
C1口の最低社債額が発行総額の50分の1未満であること。
債権者保護の為、債権総額を社債最低額面で割った数が50未満である必要があります。例えば、最低額面100万円の場合は、4,900万円まで募集できます。(4,900万円(債権総額)÷100万円(社債最低額面)=49)
D社債購入者に金融のプロがいないこと。
社債の購入者に証券会社、銀行、保険会社等といった金融のプロがいないことを条件としています。
少人数私募債発行のメリットは?
1)元金据え置きで、償還期限を募集会社が決めることが出来ます。
償還期限までは資金の全額を自己資本のように安心して使えます。また、償還期限が到来しても、社債権者の承諾があれば償還しないで、新たな社債に借り換えるということも可能です。
2)銀行借入のように、歩積み、両建て、拘束預金がないので、資金効率がよい。また担保提供もありません。
3)社債の利払いは、後払いです。
銀行借入金のように前払いではないので、実質金利は低くなります。
4)社債利子は、株式配当金と異なり借入利息として損金扱いとなります。
5)社債権者は株主とは違うので、会社としては毎期決算報告書等の公開 義務はありません。また、経営に対する発言権を持たないので、経営に対する束縛を受けません。ただし、会社と社債権者(縁故者)との信頼関係をより円滑にするためにも財務情報は公開した方がよいでしょう。
6)社債権者は預貯金より有利な利率で、しかも、企業の損益に関係なく、安定した利息収入が確保されます。一般的に2〜5%の利率で募集をかけているようです。
7)社債権者の社債利息収入については、国税・地方税あわせて20%の源泉徴収のみで課税は終了となります。税率の高い方の余裕資金運用としても魅力的です。
8)取引先等が社債権者となって、経営のバックアップをしてくれると、銀行などの対外的な信用が上がります。
少人数私募債の発行は、応募予定縁故者が決まってさえいれば、社債応募期間が2週間程度あれば手続可能な「打出の小槌」のような資金調達手段です。しかし募集に際して最も大切なのは、募集会社の将来性や資金調達の目的、中長期事業計画、資金計画が明確であり、縁故者の信頼が得られるかどうかです。当然、経営の公明性も問われることになります。
先月に引き続き「資金繰り計画表」の作成についてご紹介していきます。前回、下図の(1)から(3)について紹介しましたので、今回は(4)の「資金繰り計画表」の完成までの手順についてA社のデータをもとに解説していきます。(データは6月号に掲載したものを利用しています。)
┌────────────────────────────┐ │(1)営業活動で生じる収入の予測を立てる(前回) │ └────────────────────────────┘ | ∨ ┌────────────────────────────┐ │(2)営業活動で生じる支出の予測を立てる(前回) │ └────────────────────────────┘ | ∨ ┌────────────────────────────┐ │(3)通常の営業活動以外で生じる収支の予測を立てる(前回)│ └────────────────────────────┘ | ∨ ┌────────────────────────────┐ │(4)収入と支出を当てはめ、資金繰り計画表を完成させる │ └────────────────────────────┘
(4)収入と支出を資金繰り計画表に当てはめ、資金の過不足を計算する
資金繰り計画表は、メニューの「34.資金繰り計画表」を使うと簡単に作成できます。まず、FX2 for Windows のメニューから「34.資金繰り計画表」を選択し、図1のように必要なデータを入力します。

@資金繰り計画表の計画期間を入力します。
A資金繰り計画表の各月の年月日を入力します。
B作成を開始する月の月初資金有り高(12年6月末資金有り高)を入力します。
C毎月残しておきたい月末資金有り高を入力します。
毎月残しておきたい月末資金有り高とは、臨時の支出に備えるために運転資金の予備として常に残しておきたい資金の額をいいます。今回のA社の場合には、1,000千円を月末資金有り高とします。
次に、収支区分の左にある番号をクリックして、図2のように収入や支出の内訳を入力していきます。なお、法人税等の支払は「4.決算設備等支出」に、定期預金の取崩は「13.他の財務等収入」で入力して下さい。


すべての収入・支出の内訳を入力すると、図3のようになります。

「差額」欄を見ると、各月と計画期間の過不足が一目で確認できます。まず、単月では7月に100千円、8月に900千円不足し、9月に800千円の余剰が生じますが、3ヶ月間を通して見ると、最終的に200千円資金が不足することが分かります。A社はどうすれば良いのでしょうか。まず、7月と8月に不足する資金1,000千円を調達しなければなりません。今回の資金不足が一時的なものならば、取引銀行等から短期的に資金を借り入れることが考えられます。反対に長期的に資金が不足するようならば、定期積立や保険積立金の一部を取り崩して資金を補い、さらに今後資金不足を生じさせないために営業活動等を根本的に改善することが必要でしょう。早速、A社は最善の方法を検討し、資金繰り計画表を完成させました。
今回ご紹介した方法は1ヶ月単位での予測ですが、入金が1日遅れても資金繰りには影響が出るため、翌月1ヶ月分位はさらに細かい(10日単位や締日単位の)計画を作ることをお薦めします。図1の「年月日」欄の変更で簡単に利用できますので、是非一度お試し下さい。